あの、シュークリーム落としましたよ。【HQ】

バナナでイルカ作んのにハマってました。 ページ20

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花巻side


金曜日になる。

戸惑いながらも鞄に入れた2つのシュー
クリーム。

そして、部室を出る。

｢……花巻｣

｢なんだ？｣

｢例の件、頼んだぞ｣

岩泉の何処か含みのある顔は、俺にとって今、
一番の心の蟠りをつつく。

｢……うーす｣

とにかく、早く高津に会いたかった。

そう思うくらいに、誰も責めることが出来ず、
モヤモヤすることがあったから。

でも。




｢……来ねえ｣

もう完全に、夜遅い。

高津は、未だ来ていない。

昨日みたいなパターンかとも思ったけど、流石
に遅すぎる。

毎日放課後、ここで会おうだとか約束した訳
でもない。

……でも。

｢……会いてえ｣

この時間、好きなんじゃねえのかよ。
昨日、お前は何を思って、俺の手を振り払い
走っていった？

俺は、何をしてしまった？

スマホで時間を確認して、立ち上がる。

今、どうせ高津に会ったとしても、合わせる顔
がない。

なら、帰ってしまっても、良いんじゃないか。

感情を引き摺って、重い足を引き摺って、
エナメルバッグを首に下げ、公園から出る。

"日曜、何時集合？"

ポケットで揺れたスマホ。取り出せば、光を
放ちながらメッセの通知を告げている。

理由もなく後ろめたい気持ちが心臓から
ぶら下がっている。

頭上には糸があって、その糸はメッセの送信主
と、送信主を見つめる岩泉の笑顔で出来て
いる。

その糸は俺をぶら下げて、俺は、糸によって
前に進むしかなくて。

前進がここまで重いものだとは、思ったことが
なかった。

後ろめたさが勝てば、心臓からぶら下がる
それは重くなり、糸が切れる。

後ろめたさが軽くなれば、あいつらの笑顔のみ
で進むことが出来る。

……でも、俺のこの後ろめたさは、高津への
感情と同じだから。

高津への感情は、捨てたくない。

俺の指は、意思とは反対に動く。

"10時に、駅前集合にしよーぜ"

気取らず、かつ冷たくもなく。

いい距離を保てたと思える一言。

10時。時間も丁度良いんじゃないだろうか。
長くいる訳でもなし、かと言って一緒にいる
時間が短すぎる訳でもなし。

既読の早さから相手の感情が読み取れて。

了解、のスタンプが、いやに可愛らしくて。

人を騙すこと、それは、ここまで辛いのか。
なあ、岩泉。

なんで、俺にあそこまで頼んだんだよ。

こんな役、嫌だ。


相手は本気だからこそ、嫌になる。



なあ、岩泉。




好きなやつがいる男に、岩泉の好きな子と


付き合えなんて、気味の悪い話じゃねえか？

塩ラーメンがお好き。→←ばいばい、自分。

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