あの、シュークリーム落としましたよ。【HQ】

冷や汗たらり。 ページ12

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｢……今日、体育あったんだよ！バレーボール
だったんだけど、怪我しちまってな！
クッソ痛かったわー｣

揺れていた瞳はすぐにコロッと変わり、
私が想像していた通りの理由を述べた。

それでテーピングしてる訳か。

｢大丈夫？それ。私、吹奏楽だったから怪我とは
無縁だったんだけど｣

｢あー、全然。慣れてるしな、これくらいの
怪我は｣

｢……え？帰宅部でしょ？帰宅中にしょっちゅう
怪我すんの？ドジなの？｣

あはは、なんて笑いながら話す松川に目を
見開き、ふと湧いた疑問を口にする。

あ……なんて声を漏らす松川に、少しの、
疑心感が湧いた。

今までも何度か、松川にこういう疑問が
湧くことはあった。

こう言っていたのに、どうして？みたいな。

なんだろうか、この違和感。

｢あー、違う違う！中学んときは部活やってた
から、そんときの怪我で慣れてるって話｣

｢なるほど。……なんか、痛々しいね、それ｣

少しの笑いをこぼして、指に巻かれた
テーピングを見る。

痛々しい。

私自身、怪我と言っても始めたての腱鞘炎
とか、そこら辺だけだったし。

中学のときにどれだけの怪我をしたのか。

慣れるほどの怪我なんて、したくないけど。

｢悪い。取るか？｣

｢いやいや、逆に取った方が痛いでしょ。
大丈夫だって｣

空になったシュークリームの袋を丸めて、
公園のゴミ箱に捨てる。

それを見た松川も急いで食べ終わって、私と
同じようにゴミ箱に捨てた。

｢それじゃあ、そろそろ帰るわ｣

｢あ、送ってく｣

｢いやいや、大丈夫だって｣

｢送ってく｣

｢そういうのは彼女さんにやんなよ｣

送ってく、と聞かない松川を放っておいて、
手を振りながら暗くなった道を歩く。

正直いえば暗がりというのは少し怖い。

でもまあ、今日は星がきれいだから。

だから、大丈夫。

｢A！！｣

急に後ろから呼ばれた名前に、思わず足を
止め、振り返る。

公園の入口から、街灯の光を浴びながら
息を切らす松川が、汗をかいてこう言った。

｢俺、彼女いねえから！！｣

は。

変に焦って、ブランコから走ってきたかと
思えば。

何を言い出すんだ、こいつは。

｢彼女とかいねえし、誰でもウェルカム状態
だから、その、勘違いすんなって話！！｣

｢……え、あ、うん｣

言い終わって、ハッとして、顔を真っ赤に
した松川が、顔を逸らして、じゃあな、なんて
帰っていく。

取り残された私は、困惑、という言葉が合う
くらいに頭の中がグチャグチャだった。

カップラーメンの麺をこぼした。→←可愛いよりカッコイイの方が嬉しかったりする。

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