7話 ページ8
悪鬼夜全滅の夜、俺は日が昇る前にその場から立ち去った。天狗の剣士に見つからないようにするためでもあるが人に見られないようにするためである。少し前は般若の面を被ったから誤魔化せたものの今度はそうはいかない。
周囲を見回し人がいないことを確認すると素早く走り抜ける。村を囲う高い柵の出入り口の門には門番が一人いた。最近悪鬼夜が人を襲い続け食らったからだろう。
「どうするべきか」
人に手を出すのは気が引けるがこの際仕方ないので外を向いた瞬間手刀を打ち込もう。気絶させれば問題ない。
そうと決まれば行動は早くも実行された。きょろきょろと辺りを見回す門番が外を向いた瞬間に距離を縮めて後ろを振り返る前に───そう手刀を打ち込もうとした時だった。
水を描き空気を裂いた刀の水色の刃が俺の首めがけて一振りされた。
「!?」
大きく一歩さがるが間に合わず首の右側が少しかすり切れる。血が出ているがそれは気にせず手を当てるだけにして刀の持ち主を睨む。そこには天狗の面をつけた男が怯えて腰でも抜かしたのだろう、座り込む門番を左手で制してこちらをじっと見ていた。
「お前が……」
そこまで言って止める。なぜ止まったのかはわからないがここはやはり逃げさせてもらおう。左に物凄い速さで駆け柵を飛び越えた。
しかし男は人間とは思えない速さで食らいついてくる。少し余裕そうだが気のせいだろうか。一番近づいた時また水を描いた刃が俺の首めがけて一振りされる。が横に勢いよく転がり避ける。しかし男は止まらない。先程よりも速い、おそらく突きだろう。しかしそれは首ではなく足首だった。避けるための部位を切り落としてから首でも狙うつもりだろうがそれはすべて予測済みだ。刃を避けつつ勢いよく逆立ちしそのまま男の頭を足で蹴ろうとする。しかしそれは左腕で阻止され刀は太ももを切ろうとくる。
「っ! くそ……」
どちらかというと男の方が上手だった。先程蹴ろうと上げた足は切られ挙げ句体制を崩した。そのまま地面に倒れ込むと男は俺を見下ろす。
そしてまた口を開いてあの続きを言った。
「お前が……あの悪鬼夜を討ち滅ぼしたのか?」
俺はそれにたっぷり時間を置いて横に首をふった。つまり俺ではないという意思表示。
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作者名:クレイジーnight | 作成日時:2019年5月21日 20時