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2話 ページ2

目を閉じれば、いつも思い出す。俺が鬼に成ったのは約30年前。ある祭りが行われていた、めでたい日だった。

「お兄様!」
「淑子、あんまりはしゃぐなよ」

そう微笑んだ頃だった。首に生暖かい液体が流れたと思うと、ひどい痛みが走る。首を抑えうずくまると、

「があああぁぁぁぁあ!!」

脳内が殺戮と空腹の衝動で埋め尽くされた。お腹が空いた、人を殺したい。ああ、目の前にいる人間を殺そう。食らおう。妹すら自身の空腹と殺戮の衝動を満たすだけのものだと認識するほどだった。本能に従うように、二の腕を長く伸びた爪で切り裂く。

「うっ……ぁ、痛いっ……!」

白い腕から流れる真紅の血から、甘い、美味そうな匂いがする。それを俺は、首を持ち上げて飲み干そうとした。血肉を食らおうとした。

だめだ!

そう誰かが言った。いや、俺が言った。唯一の家族。実の妹を食い殺すなんて、だめだ。だから俺と同じ化け物にするなんてなおさらだ。

「近づくなぁっ!」
「お、お兄様……」

淑子を乱暴に地に落とす。なんとか理性を保ち、俺を化け物へと変化させたであろう男を睨みつける。艶やかな黒髪。異様なまでの美しい紅玉に、白い肌。ひどく整った顔。

「ほう、まだ理性があったか……まぁ、いい。私のことを口に出してはいけないぞ。私はいつでも君を見ているのだから。出した時は……」

奴は名を、鬼舞辻無惨と名乗った。その瞬間、身体中が呪われた気がした。俺が鬼だと、本能的にわかってしまった。手が震え、焦りと怒りが頭を埋め尽くした。

「淑子」

震える声で、紅玉の瞳で、妹を見つめる。こんな経験は親を亡くした以来だろう? ごめんな。本当に、本当にごめんな。おまえを守ると言ったはずなのに……。

淑子は血塗れの小さな手で俺を優しく抱きしめた。自分も怖いくせに、俺が恐ろしくてたまらないくせに、それでも優しく言う。

「大丈夫、大丈夫ですよ、お兄様……淑子は、いつもお兄様のおそばにおりますから……だから、だからどうか、ご自分を責めないで」

その時俺は決めた。あの鬼舞辻無惨を殺し、俺は人間に戻って淑子と静かに暮らそう、と。もう二度と、大切な者は失いたくない。だれ一人として、死なせはしないと。誓った。

「待っていろ、鬼舞辻無惨……!」

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作者名:クレイジーnight | 作成日時:2019年5月21日 20時

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