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夜が寒風と色を連れて、やってきた頃、私は新たにバイトを始めたのだった。今はその帰際というところであった。

 夜が色を撒き散らしたせいで、視界が酷く悪い。ゆえに、道端に倒れている大きな棒が何なのか、わかるはずもないのだ。

 好奇心をくすぐるそれは、危険な匂いなど、気づかせることもなかった。それほど、それは鋭敏で、気配の消し方がうまかった。

 カチャリ、と、黒く光るそれは、やっと人だとさとる証拠として、脳に焼き付いた。女は震える様子も見せないで、好奇心のままに、本能のままに近づく。

「やぁ、お姉さん? それとも、お兄さん?」

 中性的な声だろう。自分でも自覚している。

しかし奴は動かない。それどころか、虫の息というやつだ。赤い溜まりが周囲に出来上がっている。そして何より鉄のような匂い。

怪我をしているらしい。

「……」

 助ける義理は微塵もないが、見てしまった上、声もかけてしまった。ああ、面道なものに絡んでしまった。好奇心に負けた自分を咎める。

「まぁ、ここじゃあ何だし、家においでよ。手当もしてあげるし、事情も聞かない。だからその拳銃をおろしてくれないか」

 そう言うと、吠えて噛みつきそうな犬は、そろそろ、と、銃をおろした。

「歩ける?」
「……ぃいや」

 掠れる声で答える。

「じゃあ手を貸そう」

 力無く落ちている手を、強引に首に回す。よっこいせ、と、勢いよく前に踏み出すと、筋肉質で、しなやかな身体は起き上がった。

 月明かりが犬を照らす。

「へぇ」

 月光に反射するのは、白銀の髪。いや、金髪だろうか。顔もいい男だった。

「さ、行こうか」

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作者名: | 作成日時:2019年4月22日 13時

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