BLACK

「脆愛」Fragile LOVE ページ15

肌が触れ合う音。
Aの甘い声。

Aが俺の上に乗っかると。
僅かな隙間もなく繋がり合う。



「んっ…ジヨン…っ」



さっきまで、旦那のことで泣いていたのに。
今は俺の上で鳴いている。

こんなにも気持ちよさそうな顔をして、やらしい音を響かせて。

揺れるAを見ていると、快感でくらくらと眩暈がしそうになる。

俺の腹についている手を引っ張って。



「きゃっ！」



倒れ込むAの頭を引き寄せて。
息もできないくらいに唇を合わせながら。

今度はAが俺を見上げる番。



「A、俺の背中に爪を立てて。次に逢えるまで消えないくらい。」

「っやぁん！ジ、ヨン…っ！」



奥深くまで貫いて。
わざといいところばかり責める。



「全然痛くないよ？まだ足りない？」

「…っあ！だめっ…！」



遠慮がちに俺の背中に爪を立てるA。

そんなんじゃなくて。
いっそのこと、一生消えないくらい深く深く傷つけて欲しいのに。



「A、もっと。もっとだよ？傷が残るくらいに。」

「…そんなの…できない…」



俺の我儘を、ちっとも聞いてくれないねAは。

でも。



「A、愛してる。」

「…うん。あたしも愛してる。」



今はこの言葉が聞けるだけで充分。
嘘でもなんでもなくて、Aの本心だって俺はちゃんと信じているよ。


好き。
もう、Aのこと以外何も考えられないし、考えたくもない。

今まで、欲しいものはなんでも手に入れてきた。

でも本当に欲しいものは手に入らない。


”もっと早く出逢いたかった。”


何度そんなことを思っただろう。

もしも、神様が本当に居るのなら。

時間を戻してよ。
Aが、あいつと出逢う8年前に。

俺があいつよりも先にAを見つけて。
あいつよりも先に愛して。
あいつよりも先に無限の契約を交わすから。



・


いくら言葉で”愛してる”なんて言っても。
紙きれ1枚の関係こそが、最強の関係で。

今の俺にとってはもっとも最幸な関係。

紙きれにも、何にも残せない俺たちの関係は。

脆くて、弱い。


・

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