こわくないよ＿＿4 ページ5
児童「ウソだ…！こいつが優しいわけないよ、おれレッド叩かれたもん！遊びに誘ってあげたのに、叩かれたもん…！」
A『…うーんと、…あっ。
まーくん、らいくん、ちょっと待っててね。』
しばらく考え込んでから女の子は、「らいくん、あげる」なんていきなりおれの顔に、ぐいぐいと紅葉の抱きまくらを押しつけてきた。やめろ、と一回言ってもその子はきかなかった。
ぐいぐい、ぐいぐいと同じことをする。
雷「……っ、おい！なにしてんだよお前！いらねぇって言ってんだろ！」
そこで、おれは意図できない女の子の行動にまた乱暴に言い返してしまった。
雷「…あ、……っ、ごめ…」
まただ、と抑えられない衝動に腹が立っていたそのとき、＿＿＿聞き間違えだろうか。
笑い声がした。
児童「ほら、やっぱりこいつ＿＿」
A『ふふ、ふふふふっ…！やっぱり、そうだ…！
やっぱりらいくん、わたしが一番大好きなキャラクターの「おおかみくん」にそっくり！』
雷「は…？おお、かみ…く…？」
話が読めないおれは、押しつけられてたクッションを持ち直しながらまだ名前もしらない女の子に問いかける。
A『まーくん、今わたしね。らいくんからやめろって言われていたのに、グイグイってクッションを押しつけていたでしょ？』
児童「…でも、おれは押し付けたんじゃなくて、ただ渡しただけだし」
A『うんうん、まーくんはらいくんと遊んであげたいと思った…やさしさで、だよね。
でもね、絵本に出てきたおおかみくんは「いいよ」って言っていないうちから、ふさふさな頭を撫でたら、うわって怒ってくるんだ。
でもね、おおかみくん…ほんとうは頭を撫でてもらいたいし、遊んでもらいたいんだって。』
児童「……？じゃあ何で怒るわけ？」
A『うん、それがね。いいよって伝えたらいいことをおおかみくんは知らなかったんだって。
…その子に怖がられたくない、その子を傷つけたくないってことばかり考えてきたから、ほんとは遊びたいっていうキモチをどう伝えたらいいのかがわからなかったんだって。
だからおおかみくんはね、その子を吠えちゃった後に、とっても反省するんだって。』
雷「＿＿＿っ、！」
おれは、名前も知らないその女の子の話にまばたきをすることも忘れてしまった。
おおかみくん、…彼女がおれにいった言葉が忘れられなかった。
A『だからね、まーくん、らいくんはぜったいに、こわい男の子でも悪い男の子でもないよ。』
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作者名：ましゅまろ x他1人 | 作成日時：2021年9月23日 19時
