23_1:黄色と青 ページ4
揺れる座に姿勢を正して、潮風を楽しむ。外国の輸送機は物騒な音を立てて、宙をぎこちなく飛翔している。此処まで大海を見渡す絶景が拝める任務はそうそうなく、少しだけ気が逸っている。
もう少しで輸送機は港に停泊する組合の豪華客船母艦の真上に配置される。自分が座っている木箱には彼らの望む補給燃料ではなく、マフィア謹製の檸檬が大量に詰められている。
合図があれば忽ち炎となって、檸檬群と一緒に船上に落下し悉くこれを燃やし尽くせとの指示だ。
埠頭で組合に諸手を上げて高々と科学の神髄を謳い上げる梶井が霞んで見える。ご丁寧に敵に異能を喰らってから反撃の弁論に臨むあたり、相変わらず好戦的な性格なのが伺える。
芥川はこの爆発に乗じた強襲に備えて、別所に待機中。自立して動くまでに回復したようだけれど、自在に行動するまでには程遠い。
『そんな訳で、僕と宇宙大元帥から君達へ贈呈品だ!』
合図の言葉が通信機と下方から同時に発せられるのを聞いて、先ずは小さな破裂音をさせて輸送機に繋がる縄を断ち切る。
墜落が始まる瞬間に、輸送機の運転席にいる異国の肌色をした組合員と目が合った。驚愕に見開いた眼孔に、堂々とマフィア流の自己紹介位してから失礼すべきだったかな、と少し反省する。
空中にて木箱を破砕させれば、黄色い檸檬が青い海原を背景に視界一杯に飛び散って中々楽しい。
自由落下する感覚のままに、自身を炎と同化させていく。
轟音、爆砕、豪華絢爛と云われた客船の通り、吹き飛んでいく家具の破片も船体の内装も金、銀、煌めきに満ちている。
異邦にて拠点を殲滅するのは金銭以上に打撃を与えるだろうから、宜しくね、との首領の言葉を頭に、
踏みつけた額縁の艶が消えて黒く燻るまで、すこし長めに居座ることにした。
焼け焦げた匂いに潮騒の香りが混ざる様になって、そろそろいいかな、と穴だらけの外壁から海を臨む。
先程より遥かに近くなった大洋は先程の爆発には驚き騒めいたものの、もうすっかり静寂を取り戻している。
65人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
aka(プロフ) - 朝比奈さん» 朝比奈さん メッセージありがとうございます…本当にめたくそ返信が遅くなってしまってすみません。。。!!ぼちぼち続けていきますので、楽しんでいただければ幸いです。 (2017年12月11日 8時) (レス) id: eea1022fcb (このIDを非表示/違反報告)
朝比奈(プロフ) - この小説大好きです!更新楽しみにしています! (2017年5月12日 7時) (レス) id: 8eec1a6356 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:aka | 作者ホームページ:http://touroumaze.higoyomi.com/
作成日時:2017年4月19日 22時