流感日和5 ページ10
「兄ちゃん…」
「割烹着似合うなあ…」
「…随分お元気様じゃねェか。そンなら今すぐに完治して鍛錬に行くか、粥食って大人しくすっこんでるか選べェ」
若干血走ってきた表情から慌てて手元に視線を移せば、料理手本のような完璧な卵粥。氷室に置きっぱなしだった野菜の切れ端まで入っている。この短時間で。
「さっさと食え、んで茶ァ飲め、茶。それで寝てりゃすぐ治ンだろ」
「…おいしい!ごめんね実弥、折角の休日なのに。さっきの話じゃないけれど、今度何かお礼をさせて」
「いらねェわ。ンな事より、今度の手合わせ分覚えとけよォ、A。それでいい」
「柱同士の手合わせ!?いいなぁ、俺もやりたい!」
「あァ!?呼吸も使えねェ奴が何言ってやがる、図体だけデカくなりやがって。ちったァまともな飯食えや」
「じゃあおかわりほしい…」
「もう食ったのかよ早ェな。…さっさと皿よこせ」
「昔っから兄貴の料理旨いんだもん」
「黙れ、俺に弟なんざいねェ。それになァ、あン時熱で唸ってる俺の口に手前等おはぎ山ほど突っ込みやがってよぉ。なァにが看病じゃ、真面目に死ぬかと思ったわ」
「だって好物じゃんか。病気の時は好きなもんが食いたくなるって、母ちゃん言ってたし」
「そうじゃねぇ、確かに好物だがそうじゃねェ…そもそもその話はお袋が林檎好きだったからであってだなァ…」
嬉しそうに破顔した玄弥の表情、器用に青筋を浮かべながら苦笑を浮かべる実弥の表情。外で出逢う時には決して見る事の出来ない、幼少の頃より繋がってきた兄弟たち。
病身に染み入る卵の薄味と、自分も家族と暮らしていた時の事を思い出して、心が温かくなる。早く復帰しなければ、という思いとこの時間が長く続けばいいのに、と鬼殺隊士としてあるまじき思いが交差する。
確かに実弥の粥は本当においしい。私もおかわり、貰おうかな。
なんか段々青筋増えきているけど大丈夫かな。
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作者名:aka | 作成日時:2020年1月8日 9時