【鬼滅の刃】短編夢話集【不死川実弥】 (ページ2)

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払暁1 ページ2

近所のおかみが、姿を見せない。旦那を亡くしても、一人で毎日買い物に来ていたのに。

日雇いで何とか稼いだ少ない金子で食料を求めた時に、店の主人から聞いた話。

嫌な予感がして、夜を待ってから大分離れたあばら家に向かってみれば、夫を亡くし一人住んでいたらしい女性は既に人の形も無く、その躰を異形の者に食い散らかされていた。

共に当てのない旅を続けている仲間と目配せをし、外壁から屋根に上って、穴の開いた屋根から襲撃の隙を伺う。

二人の人間が自らを観察していることに気付く様子もなく、鬼は喜々として食事を続けている。骨を掻き分け、臓腑を喰らい、くぐもった咀嚼音が室内に響く。

昼間の街の大人達が想像した事も無いだろうこの凄惨な光景は、何度見ても慣れるものではない。

空腹でありながらこみ上げてくる吐き気に、必死に耐える。もう片方に隠れた場所から怒りに血走った眼差しが此方を見、いこう、と訴えてくる。

獲物をほとんど食い切って満足げな鬼が眼球をつまんでひとしきり眺めた後、口に収めたと同時に飛び掛る。

ありつけた食糧に熱中していた所為か、はたまた鬼という存在になってまだ時間が浅いのか、恐らく両方だろう。鈍い音が大きく響き、子供二人の拙い奇襲をまともに受けた怪物は簡単に地に倒れ伏す。

それでも寄ってたかって四肢を切断しても尚、言葉ともつかぬ呪詛を吐き出し、不気味に蠢き続ける姿は、幼子の頃に母から聞いた夜伽の妖話よりも格段に恐ろしく、震えで手が止まる。

途端にがつ、と傷だらけの腕が自分の手首を掴み、縄を寄越してくる。粗方肉片に分割した鬼を、動かない体を叱咤しながら縛り上げていく。

全ての鬼には再生能力が備わっており、縛ったところで終わりではない。此れから二人でかわるがわる寝ずの番をして、太陽が昇るまでこの怪物を監視していなければならない。

傷を修復して縄を解きそうになったら、また切刻むのだ。

眩しい朝日の訪れまで、何度となく。