【獄都事変】近くて遠い (ページ24)

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夏祭り肆ページ24

待ち合わせの場所に私が着いたのは午後六時を少し過ぎた頃だった。
まだ二人の姿はない。
よかった、少しだけ心の準備が出来そうだ…。

10分もしないうちに木舌が現れた。

「待たせちゃってごめんね」

本当に謝る気があるのかないのかわからない笑顔でそう言ってきた男は、
瞳と同じ色をした浴衣を着ていていつもと雰囲気が違うような気がする。

｢気にしてない。任務お疲れ様。
谷裂は？」
「最後の最後に亡者が出たらしくてね。
連行してから行くから少し遅れるって。
でもすぐ来るんじゃないかなぁ。
谷裂もこの日を楽しみにしてたし」
「へぇ、それは少し意外…」

谷裂も意外と子供っぽいところがあるなぁ。
まあ、誘ってくるくらいなのだから楽しみではあったのだろうけど。

「ところで今日のAは一段と可愛いね」
「…は」
「キリカさんが張り切ったのかな？
その浴衣すごく似合ってるし、大人っぽくてドキドキする」
「な、」

なんなんだコイツは！！！
まだ素面でこれか！？軟派ものめ！
言われなれない言葉に自分が赤面しているのがわかる。
悔しいけど顔が熱い！

「はは、顔赤くしちゃって本当に可愛いねAは」
「ど、どうしたんだ木舌？
まだ呑んではないだろう？」
「呑んでないよ。
せっかく二人きりだし、ちょっとはアタックしてみようかなって」

アタック…？攻撃ってこと？
言葉とは裏腹にいつも以上に木舌が優しい顔をしている。
ど、どういうこと…？

「え、っと。もう少し簡単な言葉で…？」
「だから、Aに」
「遅れてすまない」
「うわあっ！」

谷裂が後ろから声をかけてきた。
情けない事に驚いて声を上げてしまった。

「あー、谷裂もう少し遅れてきてよかったのに」
「ふざけるな。
…これ以上遅れたら祭りも終わってしまうだろう」

木舌は残念、と肩を竦めて呟いた。
本当に急いで来たのであろう谷裂は額に汗が滲んでいる。
そんなに急いで来なくてもちゃんと待っていてあげたのに。
ばちっと谷裂と目が合った。

「…A」
「なに？」
「その黒の浴衣はお前によく似合っているぞ」
「…あ、りがとう」

まったく、二人してなんなんだ。
顔が熱い。

「まあ、キリカさんがやってくれたのだから当然だね。
…早く祭りに参加しよう。楽しみだったんだ」
「そうだね、行こうか。
おれも楽しみだったよ」

着いた頃より賑やかな祭囃子の方へ私たちは仕事中の話をしながら向かった。