苦くて、甘い。 (ページ38)

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なんて、

嬉しく思ってたのも束の間。

先生は無言だし

なんか歩くの早いし.....遠い。

そんな状況が

ずーっと続いて、

多分もう10分位経つ。

なんか、怒ってる？

でも今日何も話してないし....

一人考え込んでたら

震えたスマホ。

ライン......太輔から、で。

藤》宿着いた。
あとどれくらい？
大丈夫か？迎え行く？

パッと前みたら

さっきより距離空いてるし

なんか、悲しくなってきた。

》お疲れ、早いね(笑)

》全然平気だよー
けど、一人でいるのと
大して変わんないかも。

そう返したら、着信。

先生に電話出る、って

一声掛けようかと思ったけど

ほんと、遠くて。

もう、いいや。

「....もしもし」

藤『A？

先生一緒じゃねぇの？』

「んーー、いるにはいるけど

なんか歩くの早くて

距離開いちゃったの(笑)」

その距離を見るのも

イヤになってきて

俯いて、地面の石ころ

蹴りながら歩いてく。

藤『は？なんだそれ。

意味ねぇじゃん....

マジで迎え行くわ』

「え？いや、いいよほんと。

あと15分もすれば着くし

全然見えない訳じゃな───」

蹴飛ばしてた石ころが

人の靴に、当たっちゃった。

顔上げたら、ムッとした

不機嫌丸出しの先生がいて。

田舎で山の中だからか

虫の鳴き声がやたら響いて。

藤『.......A？』

太輔の電話の声も

漏れて聞こえるくらい、静か。

「っ、あ───」

玉「風呂入って、早く寝なよ。」

「...」

また勝手に、電話切った。

何？.....なんなの？

私がここにいること自体が

気にくわないとか？

なんで、そんな怒ってるの？

私の携帯、ポケットに入れて

また無言で歩き始めた先生。

こんなの────、やだ。

こんなんだったら

一人で歩いて帰りたい。

お化けより何より

この空気の方が......イヤ。

「...」

いつもなら大きくて

あたたかさを感じる

大好きな背中なのに。

今は、冷たく感じて

足が止まって、

動きたくなくなった。