Astilbe Ⅱ (ページ14)

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河野純喜#1 ページ14

先生に頼まれた荷物を運んでいる時、躓いて持っていた荷物を派手にばら撒いてしまった
　

放課後だし誰もいないとは思うけど、躓いたのが恥ずかしくて、必死にばら撒いてしまった荷物を集めていると

「大丈夫？」

そう声が聞こえて顔を上げると、中腰でこちらを覗き込むようにして男の人が立っていた

「え、あ、大丈夫です…」

もしかして見られてたのかな

私は余計に恥ずかしくなって、急いで荷物を集めようとした

「手伝うから、そんな慌てんでも大丈夫やで！」

その人はそう言いながら、ささっと荷物を拾ってくれた

「これで全部？」

「あ、はい…ありがとうございました」

「半分ちょーだい？」

「え？」

そう言いながら私の荷物の半分とは言わず、ほとんどを取った

「これどこ持っていくやつ？」

「え、いいです！大丈夫です！」

「もう持っちゃったし！」

笑顔でそう言うその人は、荷物を返してくれそうになかった

「…資料室です」

「おっけー！ほないこ！」

そう言ってスタスタ歩き出してしまったその人に、私は慌ててついて行った

「名字ちゃんはなんかの係なん？」

「え？」

「こんな大荷物、一人で運びよるから」

「あ、今日日直だったので…」

急に名字を呼ばれたことにも、話しかけられたことにも驚いた

「あ、俺河野純喜！3年！」

私が驚いた顔をしていたのが見えたのか、その人は自己紹介をしてくれた

「河野、先輩…」

「そんな堅苦しくならんでええって！純喜でええよ！」

「いやそんなわけには…」

「ええってええって！」

「じゃあ、純喜先輩で…」

「んー、まあおっけー！」

そう言って先輩は笑った

太陽みたいだな、と素直にそう思った

「着いた〜！」

「本当にありがとうございました…！」

「全然大したことやないから気にせんで？」

「いえ、とても助かったので…！」

そう言うと、先輩はまた笑った

その笑顔に惹かれてる私がいた

　

「じゃあ俺、部活行くわ！」

またね、と元気よく手を振りながら、先輩は走って行った

「部活あったのに手伝ってくれたんだ…」

申し訳ないと思う気持ちと、何部なんだろうという疑問で私の心はいっぱいになった