鶴房汐恩#1 ページ1
「ほら、おうち帰るよ〜」
仕事が終わって、娘を迎えに行って家へと帰る
すごく幸せなはずなのになんでだろう
たまに、虚しくなる
「おうち入って〜ちゃんとおてて洗うんだよ〜！」
娘にそう言いながらポストの中を確認すると、見慣れない封筒が入っていた
そっと手に取って字を見た瞬間に分かった
差出人の名前はなかったけれど
これは汐恩からの手紙だ
急いで家の中に入って封筒を開けた
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
Aへ
元気ですか
僕は韓国で元気にやっています
この間日本へ帰ってきた時、Aが結婚して子どももいると聞きました
遅くなったけど、おめでとう
直接伝えたかったけど、面と向かうと言えない気もしたのでこれで良かったかもしれません
日本へ帰ってきた理由は家族に会うため、そしてAに会うためでした
高校の時、Aに何も言わずに韓国に行って、何年経ったでしょうか
Aに言ってから行けば良かったのに言い出せなくて、結局言えないまま韓国へと向かいました
後からAがすごく泣いて、落ち込んでいたと聞きました
あの時は本当にごめんなさい
韓国でただがむしゃらに練習して、なんとかアイドルになるという夢を叶えられました
もしかしたらAが見てくれるかもしれない
そう思うとどんな小さな仕事でも頑張ることができました
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
久しぶりに見る汐恩の字が懐かしくて、つい視界が滲みそうになる
私も汐恩がアイドルになって驚いたよ
そう思いながら次の便箋に目を向けた
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作者名：咲彩 | 作成日時：2021年10月13日 23時
