Astilbe Ⅱ (ページ11)

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佐藤景瑚#1 ページ11

「どうしたら、振り向いてくれますか」

佐藤くんは何時に無く真剣な声で、真剣な顔でそう言った

会社の後輩である佐藤くん

彼が私のことを先輩以上に思ってくれていることに、なんとなく気付いていた

でも鈍感なふりをして、ただの仲の良い後輩としてしか接してこなかった

「名字さーん！新人さんきたよ〜！」

「はーい！」

初めて彼を見た時、絶句した

「浮気なんてしたら化けて出てやるからな〜」

昔、冗談めかしてそう言っていた彼が、本当に化けて出たのかと思った

「佐藤景瑚です！よろしくお願いします！！」

佐藤景瑚と名乗ったその人は、当たり前だけど彼とは名前も、声も違った

「佐藤くんは名字さんにいろいろ教えてもらってね」

私はなぜか佐藤くんの教育係になってしまった

関わりたくないと思っていたのに、嫌でも関わらなくてはいけなくなった

「名字先輩、よろしくお願いします！」

そう言って笑う佐藤くんを、私は直視することができなかった

佐藤くんと関わっていくうち、当たり前だけど彼とは違う部分を何個も見つけた

でも、背が高くてすらっとした体型も

時折おどけて周りを笑わせてくれるところも

思い出してしまう

どうしてこんなにも、彼と似ているの？

佐藤くんを見るたび、チクチク心が痛んで仕方なかった