Astilbe (ページ5)

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大学を卒業し、私は希望していた地元の会社に就職できた

希望していた会社とはいえ、しんどいことは多々あるけど、その度にテレビに映る鶴房くんをみて自分を励ましていた

その日はついてない日だった

ありえない初歩的なミスをするわ、取引先に怒られるわ、理不尽なことで上司に怒られるわと散々だった

今日は絶対やけ酒してやると意気込んで仕事をなんとか終わらせた

定時もだいぶ過ぎた頃、やっと仕事が終わって会社を出た

重たい体を引きずりながら帰宅していると、いつもなら前を通り過ぎるだけの母校がふと懐かしくなってふと立ち止まった

平凡だったけど友達と遊んだり、勉強もちょっとは真面目にしたり…

委員会の作業はだるかったけど、鶴房くんと話してた時間は楽しかったな…

　

「…名字さん？」

マスクをして帽子を目深にかぶった格好だけ見ればいかにも怪しい人に声をかけられた

だけど…

「鶴房…く、ん？」

聞き馴染みのある声、だった

「やっぱり！名字さんやと思った！」

「……よくわかったね…？ていうかなんでこんなところにいるの？」

アイドルがこんなところでウロウロしてていいの？

私なんかに声かけて大丈夫なの？

なんて言葉を一回飲み込んで聞いてみた

「いやー…っていうか名前さんこそなんでここに？」

「…なんでって言われるとなんでだろうね」

「なんやそれ」

ふはっと笑う顔は、変わらないような気がした

「…ちょっとだけ話せへん？」

「…うん、いいよ」