Astilbe (ページ39)

今日:17 hit、昨日:8 hit、合計:61,223 hit

#3 ページ39

二人で学校を出て、駅近くのファミレスに来て

「Aはさ、汐恩のことが好きなんやろ？」

自分の心に傷をつけながら、俺はAにそう聞いた

「…祥生はすごいね。私のことなんでも分かっちゃうの？」

Aは悲しげに笑いながらそう言った

なんでも分かることが出来たら良かったのに

「汐恩は全く気付いてなさそうやけどな」

「…汐恩は鈍感だもん。それに幼馴染って言う立場に甘えてた私も悪いし…でもまさか汐恩に好きな子ができるなんて思ってなかったや」

そう言って泣きそうな顔をするAを慰める術など持っていなくて

そうやな、としか言えなかった

「Aはこれからどうしたい…？」

自分でも意地悪な質問だと思う

好きな人には想い人がいて、きっと自分には振り向いてもらえないことをAは分かっているだろう

その上でこんな質問をしている自分の性悪さに嫌気がさす

「…幼馴染としてしか汐恩の隣には居られないよ。汐恩には好きな人がいて、私がもし気持ちを伝えても多分ギクシャクして、今までみたいに一緒には居られなくなる…それなら幼馴染としてでいいから、汐恩の近くに居たい、な…」

そう言いながら涙するAに、俺は何をしてあげられるんだろう

きっと何を言っても意味、ないんだろうな

そう思ってそっとハンカチを差し出した

「ありがとう…」

俺は声を抑えて泣くAが落ち着くまで眺めることしか出来なかった

その日以来、Aはいつも通り明るく振る舞って、なんなら汐恩の恋路の手助けもしていた

一度、本当にそれでいいのかとAに聞いたけど

汐恩が幸せならそれでいいの、とまた切なげに笑うだけだった

ある日の昼休み、Aがあの女の子に、用事があるから空き教室で待ってて！と言っているのを見た

汐恩に告白させるつもりなのかな…

どうしてそこまで出来るのか俺には分からなかった