Astilbe (ページ38)

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「俺、気になる子が出来た…」

ある日の昼休み、ふいに汐恩がそう言った

「え、まじ？」

俺は思わずそう言って、そしてAの方を見た

Aは目を丸くしたまま固まっていた

「汐恩がそんなこと言ってくるなんて意外やわ」

俺は固まったままのAの分も話さなきゃと何故か思ってそう言った

「…どんな子？」

Aが震えそうになる声を必死に抑えながらそう聞いた

「…言うん恥ずいなこれ」

「そこまで言ったんならもう言おうや」

俺も少し気になってそう言った

「…隣のクラスの子」

ああ、なんとなく分かった

隣のクラスにいる、学校内でも可愛いと評判のあの子だろうな

「そう、なんだ…」

Aがそう言った後、俺も何か言おうと思ったけど何を言うべきか分からなかった

そんな時、丁度昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴って

「あ、昼休み終わってもた。…この話絶対内緒やからな！」

そう言って少し顔を赤らめながら汐恩は自分の席へと戻って行った

「A…大丈夫？」

大丈夫じゃないことなんて分かりきっているのに、かける言葉が見つからなくてそう聞いた
　

「…なにが？」

強がるAに、俺は何もしてあげられなかった

放課後、すぐにAのところへ駆け寄った

「A…」

「祥生…今日部活ないの？」

「あ、うん…今日は休みやねん」

嘘をついた

本当は病院に行くって顧問に嘘をついて、部活を休んだ

「そっか…」

暗い顔のままのAを放っておけなくて

「一緒に帰ろうや。Aが暇ならどっか寄っていこ」

そう言うとAは少し驚いた顔をした後、切なげに笑って優しいね、と言った

こんなことで慰めになるならいくらでもするよ

そう思いながら俺は早よ行こや、とだけ言った