Astilbe (ページ16)

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川西拓実ページ16

中学の同窓会に来ていた私は、外の空気が吸いたくなって店の外に出た

同窓会は楽しいんだけど、なんだかしんどくて

ちょっと抜けるねと言った後、店の外で携帯をいじりながらぼーっとしていた

「あれ、何してるの」

先ほどまで女の子に囲まれていたはずの拓実が来た

「そっちこそ」

「私は外の空気が吸いたくなって…そっちは？」

「…俺もそんなとこ」

モテる男は大変だね、と嫌味を言ってやろうかとも思ったけどやめた

そんな絡みしても無駄だし

それから二人で何を話すわけでもなく、ただぼんやりとしていたとき、徐に拓実が口を開いた

「なあ」

「なに？」

「あの時、俺も好きだって言ってたらどうした？」

その言葉は私を瞬時に過去へと引き戻した

　

あの時…中学生の頃を言っているのだ

私が拓実に好きだと伝えたあの時

よく見れば拓実の顔は結構赤くて

「飲みすぎだよ。戻ろう」

そう言って店に戻ろうとしたけど拓実は私の手を掴んでグッと引き寄せた

気がつけば私は拓実の腕の中にいて、あの頃とは違う逞しい腕に、成長した姿に心臓が高鳴ってしまう自分が憎い

「…答えてや」

「答えたらどうなるの？」

「お願い」

そう真剣な声で言われるけど

「わからないよ…もうあの頃の私はいないんだもん」

「…そっか」

拓実はそっと腕を緩めた

「ごめんな、変なこと言って。戻るわ」

そう言って拓実は店の中へと戻って行った

私はただ一人、立ち尽くすことしか出来なかった

なんと答えるのが正解だったんだろう

今でも好きだよ、なんて言えばよかったの

でもまた傷付くのが怖くて、期待して裏切られるのが怖くてそんなこと言えなかった

「もうあの頃には戻れないんだよ」

気がつけば涙が頬を伝っていた