押せば成る【影山飛雄】【２】

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「押してダメだから引いてみたんだよなー」

「！菅原さん」

「七海大丈夫かー？」



突然、ひょこっと影山くんの後ろから顔を出してきたのはスガ。

「うん大丈夫」と返しそのまま「引いてみたって？」と続けると、影山くんのかわりにスガが答えてくれる。



「言葉のままだべ。押してばっかりじゃダメそうだから、たまには引いてみれば？って助言したらまんまと実行するもんだから、影山ったら」

「やらない理由はないと思って」

「……なんだ、そういうこと…」



不器用な影山くん、試行錯誤してるんだなあ。

なぜだかホッとした心に違和感を感じていると、
スガが楽しそうに続ける。



「まあでも実際ちょっと効いてたっぽいから成功なんじゃね？なー、七海？」

「！え」

「………まあ、もう冷めたのかなとは思った、けど」



ちょっと俯きながら小さく言うと、なんだか影山くんがわなわなしているのがわかる。



「七海さん、寂しかっ…」

「や、寂しいというか、なんとなく物足りない感じしただけ」

「………っ！！」



声になってない言葉で口をパクパクさせる影山くんはお魚みたいだ。

なんか少し恥ずかしくなってしまった私が顔をそらすと、スガがまるでポケモンを召喚するように追い討ちをかけてきた。



「影山！！いけ！！」

「俺と付き合ってください！！！」

「必殺技みたいに言うな！付き合わない！！」



隣にいるやっちゃんの笑う声が聞こえる。


そんなこんなで引いてみろ作戦は、終了した模様。

次の日から、前の押せ押せ影山くんに戻ってしまった。

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