押せば成る【影山飛雄】

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菅原「…あれ集中できてるのか？」

縁下「さあ…教材よりも七海さんの顔見る回数のほうが多いっすね」



勉強を始めて数十分。

思ったより物分かりの悪い影山くんに苦戦しながらも、根気よく問題を解いていく。



「夏目漱石の作品で、あ、夏目漱石ってのは誰かわかるよね？」

「誰すか」

「…昔の作家さんだよ」

「今も生きてんすか？」

「…………」



どうやってこの高校に入ったんだこの子。

赤点回避の未来がだんだんと遠ざかる感じがして首をブンブンと振れば、「でね」と影山くんの問いを無視して話を続ける。



「あのーなんていうか、今で言うエモい？なのかな、とにかくこの時代の人たちはいかにおしゃれに女を
口説けるかに命かけてたわけよ」

縁下「(言い方)」

「だから例えば、夏目漱石…この問題ね。『月が綺麗ですね』っていう言葉は、夏目漱石なりの意味では」



「愛してる」
ワークの該当部分に線を引きながらそう言い、
理解してるかどうかの確認で影山くんの顔を見る。



影山「俺もです」

「……ああ、うん、だから漱石はこの言葉で好きな女の人を口説いて遊び歩いたってわけね」



菅原「(大地、ダメだ俺が集中できない…)」

澤村「(耐えろスガ)」



あっちのテーブルでスガたちが肩を震わせて笑いをこらえているのに気づき、思わずテーブルにあった消しゴムを投げる。

「いてっ」とスガの声が聞こえてきたのでちゃんとヒットしたようだ。


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