押せば成る【影山飛雄】

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「七海が怒ってる…」

「あの温厚なAちゃんが…」

「あの男いろんな意味で何者だ…」



先ほどとは違う意味でざわざわし始める廊下。

みんなが言ってるように、私はかなり温厚で穏やかだ。

感情が薄いわけでも、クールなわけでもない。
ただ、喜怒哀楽の中で「怒」の感情だけ薄いのだ。

そんな私がここまで怒っているのにみんな驚いているらしい。私だって驚いてるよ。



「好きな人にアピールして何が悪いんすか！」

「アピールのしかたが毎回おかしいんだよ！！なんだ朝迎えくるって！昼飯食べるって！彼氏になってからだわそんなの！」

「アピールし続けるのが一番大事って聞いたんすよ！」

「それはそう！！」

((それはそうなんだ…))

「それはそうだけど！だからそのアピールの『やりかた』がおかしいんだってずっと言ってるんでしょうが！！！」



もはや喧嘩のようになってきた私と影山くんの会話。

時間も忘れて影山くんを叱っていると、



「…A、なにしてるの…？」



その声でピタッ、と止まる私の口。



「…あ、き、潔子ちゃん」

「遅いなと思って見にきたんだけど…購買行ってたんじゃなかったの？」

「いや！ごめん！今から急いで行くから！」

「購買行くんなら俺も行きます！」

「ついてくるなあああ！！こっちは潔子ちゃん待たせてんの！自分の教室戻りなさい！！」

「A、そんな怒らなくても…」



私と影山くんの一通りの会話を知らない潔子ちゃんにとっては、私が理不尽にキレているように見えるんだろう。

どんっと怪我しない程度に軽く影山くんを突き飛ばし、私は駆け足で購買へ向かった。


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