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「お疲れ様でした〜！」
スタッフに頭を下げ、逃げ込むように移動車の後部座席に沈む。瞬きで瞼を閉じれば、そのまま夢の世界へ引き摺り込まれそうだ。
「シートベルト」
ちくっと運転席から言われ、背筋を伸ばして瞬時に手を動かした。
「翔さん、明日の入りは何時？」
静かに動き出した車内、背中に声を掛ける。
「もし早朝じゃなかったら、経営学のテキストでちょっと聞きたいことがあるんだけど、」
「明日は休み」
「…へ？」
被せるように言われた単語を暫く耳にしてなかったからか、アホみたいに口を開けていた。
「だから、休み」
「急に？なんで？」
「おまえ、誕生日だろ」
「あ、」
頭の隅にもなかった。6月だったことを、窓を濡らす雨で思い出した。
「忘れてたくらいじゃ、休みいらなかったか」
「いりますいります！ください！」
からかう瞳は楽しそうで、そんなんで俺も嬉しくなって、
「翔さん、祝ってくれない？」
今まで口にする勇気がなかった言葉を言ってみる。
「…男二人でかよ、今をときめくスターが切ないな」
「二人じゃなくて、もう一人。
…母親に会ってやってくれない？」
怪訝な表情が驚きへと変わる。
バックミラー越しに合わせた目は伏せられた。
「命日と誕生日が同じなんて堪えるけど、翔さんとなら…家族となら、会いに行けるんじゃないかって」
まだ一度も墓参りに行けていない。
親不孝なのはわかっていた、でも向き合うことを恐れて先延ばしにしていた。
「…でも、俺は」
「わかってる、わかってるからさ」
『自分が仕組んだ』
あの時の翔さんの告白が俺を追い込む嘘だったなんて、もう明らかだ。
母親を呼んでいたのは事実だ。でもそれは翔さんが母親と、過去と向き合うためだったと思う。
「いいのかよ、俺で」
「翔さんが、いいんだよ」
揺れた瞳に歯を見せて笑い返す。
すると目を細めて、微笑んでくれる。
綺麗な笑顔で。
やっと、やっと手に入れた。
ずっと、ずっと欲しかったもの。
「誰にも奪わせないから」
聞こえなかったと聞き返す翔さんに微笑んで、窓の外に目を向ける。
夜闇に散らばるネオンも星も、この世界には似合いの舞台背景だと思いながら。
fin
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こう(プロフ) - 結奏さん» 結奏さん、感想頂きありがとうございます！最後までお付き合いくださり、光栄です(^^)とにかく美しき悪魔・翔が書きたく、二宮さんも実はその遺伝子が一緒だった…が伝わっていれば嬉しいです。大野さんは勝手にラスボスになって頂きました。またお付き合いください♪ (2018年4月7日 22時) (
レス) id: 0fd2c64cf7 (このIDを非表示/違反報告)
結奏(プロフ) - こうさんこんばんは。ずっと楽しく読ませていただいておりました。翔さんの考えが読めずどきどきしましたが、翔さんが幸せを手に入れてくれるラストにほっとしました。すべてを分かっていそうな大野さん、さすがです…笑 (2018年3月25日 2時) (レス) id: a836a5dda1 (このIDを非表示/違反報告)
こう(プロフ) - とわさん» はじめましてー！感想ありがとうございます(*^^*)他の作品も読んで頂けてるなんて…本当更新遅くてすみません(今更 ; 最後までお読みくださると幸いです！感想頂けるとかなりやる気でるので、またお待ちしてますー♪ (2016年10月21日 0時) (レス) id: 582833fda4 (このIDを非表示/違反報告)
とわ(プロフ) - こうさん、初めまして。とわ、と申します。こうさんの作品をずっと前から読ませていただいていました。涙なしには読めないような作品もあれば、今回のようにドキドキする作品もあり、本当に作品の幅が広い方だなと勝手に感動しておりました。続きを楽しみにしています。 (2016年10月19日 13時) (レス) id: 6912f85516 (このIDを非表示/違反報告)
こう(プロフ) - 碧李さん» 碧李さんっ！感想ありがとうございます♪その胸の高鳴り、大事にしたいです(笑)パラレルに不慣れすぎて私が先が見えてくなってるかもですが（ｵｲ 、読ませないように必死になってます；ﾆﾉﾐﾔさんがこれから大いに振り回されますので彼の目線で楽しんで下さいませ♪ (2015年11月25日 1時) (レス) id: 0740dc5a96 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こう | 作成日時：2015年8月17日 20時
