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「あらら、就任当日に辞職危機？」
病室前で窓に顔を向ける大野の横に相葉が並ぶ。
「そうだねぇ、まずいね」
「…もうちょっと、感情こめてくんない？」
まるで関心のない暫定上司に苦笑しつつ、病室の中から漏れる声に耳をすます。
あの二人の攻防にもう一人の笑い声が重なって、もう見れないかもしれないと思っていた光景が目に浮かぶ。
「仕事のオファーは死ぬほど来てるから、好きなようにさばいてよ。
それで潤くんに稼がせてよ、敏腕マネージャー」
「…言われなくても」
「あの魔王が蘇ったら、全部取られちゃうかもだけど」
「まぁ一緒に仕事ができれば俺も潤も食われてもいいってくらいには、魔王教の信者だからね」
「カズくんなら二年でこの会社くらい買えるでしょ」
「うわぁ、カズくん骨しか残らなそう…」
「俺は早く服作りたいんだよ。隠居したい」
「おいおい、言っちゃいけないことしか言ってないよ、この人！」
「そっちが言わないだけ、でしょ」
人気のない廊下、急激に温度を持たない声が静かに落とされる。
「俺はね、昔から翔くんが幸せならそれでいいんだ。
そのためなら何でもする。
誰でも利用する。
あんたもそうでしょ？」
上がっていた頬を下げ、口をつぐむ相葉の陶器のような表情を横目に続ける。
「翔くんはきっと今幸せだ。
必死にもがいて、彼をこの世界に留めるものを手にした。
大事な仕事、大事な仲間
俺もあんたも、自分達だけが与えられるものだと思っていたもの。
翔くんの唯一の存在になるための、“執着”という名の鍵として、ね」
睨むような相葉の目線をいなす。
「俺は声に出してるだけだよ。自覚がないなんて嘘だからね。
でも、それらの鍵だけでは足りなかった。
最重要なのは“家族”という鍵。
それを与えられるのは、彼だけ。
だから囲い込んだ、利用した」
静寂が霧散して纏わりつく。
「でも、囲われていたのは、俺たちだったかもしれないね」
「…え」
「俺たちの鍵で外側を固めて、自分のそれで中から鍵を閉めた。
そして今一番近い距離にいる。もう翔くんの幸せは彼なしには成立しない。
彼が翔くんのためだけに作り上げた、見事な“箱庭”だ」
口角だけを上げた笑みを残し、背を向けた大野の足音が遠ざかる。
途端耳に入ってきた笑い声に一つ息を吐いてから、相葉はいつものように笑顔を象ってドアに手をかけた。
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こう(プロフ) - 結奏さん» 結奏さん、感想頂きありがとうございます！最後までお付き合いくださり、光栄です(^^)とにかく美しき悪魔・翔が書きたく、二宮さんも実はその遺伝子が一緒だった…が伝わっていれば嬉しいです。大野さんは勝手にラスボスになって頂きました。またお付き合いください♪ (2018年4月7日 22時) (
レス) id: 0fd2c64cf7 (このIDを非表示/違反報告)
結奏(プロフ) - こうさんこんばんは。ずっと楽しく読ませていただいておりました。翔さんの考えが読めずどきどきしましたが、翔さんが幸せを手に入れてくれるラストにほっとしました。すべてを分かっていそうな大野さん、さすがです…笑 (2018年3月25日 2時) (レス) id: a836a5dda1 (このIDを非表示/違反報告)
こう(プロフ) - とわさん» はじめましてー！感想ありがとうございます(*^^*)他の作品も読んで頂けてるなんて…本当更新遅くてすみません(今更 ; 最後までお読みくださると幸いです！感想頂けるとかなりやる気でるので、またお待ちしてますー♪ (2016年10月21日 0時) (レス) id: 582833fda4 (このIDを非表示/違反報告)
とわ(プロフ) - こうさん、初めまして。とわ、と申します。こうさんの作品をずっと前から読ませていただいていました。涙なしには読めないような作品もあれば、今回のようにドキドキする作品もあり、本当に作品の幅が広い方だなと勝手に感動しておりました。続きを楽しみにしています。 (2016年10月19日 13時) (レス) id: 6912f85516 (このIDを非表示/違反報告)
こう(プロフ) - 碧李さん» 碧李さんっ！感想ありがとうございます♪その胸の高鳴り、大事にしたいです(笑)パラレルに不慣れすぎて私が先が見えてくなってるかもですが（ｵｲ 、読ませないように必死になってます；ﾆﾉﾐﾔさんがこれから大いに振り回されますので彼の目線で楽しんで下さいませ♪ (2015年11月25日 1時) (レス) id: 0740dc5a96 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こう | 作成日時：2015年8月17日 20時
