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「ここで降ります！」
一向に動かなくなったタクシーに舌打ちし、車道に出た。
このまま乗っていた方が結果早いのかもしれないが、目的地が視界に入っておきながら立ち止まっていることは無理だった。
・
母が亡くなった日以来来ていない病院は、変わらぬ閉塞感に満ちていた。
受付を通り抜け、エレベーターへ真っすぐ歩いていく。
上昇に伴う浮遊感に息苦しさが増していく。
思いついた場所、それは初めて翔さんと会ったこの病院。
俺たちにとって唯一無二の場所。
だからこそここしかない。
俺が翔さんを追うと見こされているのなら。
・
目当ての扉は音もなく開く。
まだ夜と交代しない太陽が照らす白いシーツの合間、柵に寄りかかるようにして彼はいた。
「『あんた、死にたいの？』」
なぞって投げた言葉に、翔さんがゆっくりと振り向く。
「これはあの日あなたに拾われた命だし、どうしてくれたってかまわない。
永久に苦しめというなら生き続けるし、生きていることが許せないというなら、あなたと関係のないところで自分でなんとかする」
掴んだ左胸がどくりと鳴る。
「ここで会うことから全てあなたのシナリオ通りなら、続きを教えてよ。
あなたがこの世界に引き留める理由になることなら、なんだってやるから」
止まらない鼓動が煩わしい。
これのせいで翔さんが消えるというのなら、いらない。
そう思うほどには翔さんと過ごした時間が大事で、全て嘘だったとしても手放したくないものだから。
「…おまえ、自分が何言っているかわかってんの」
こつこつと靴音が響くごとに、揺れる瞳が近づいてくる。
「大野さんから何聞いたか知らないけど、…俺がしたこと理解してる？」
戸惑いをそのまま見せてくれたのは初めてで、愚かにもうれしく思ってしまう。
「先に真実を知っていれば、俺が取締役を追いこんでいた。
逆の立場なら、俺もきっと同じ感情を抱く。
例え兄弟でも」
真っすぐ見つめて言うと一瞬目が見開かれ、
「だから全部許す、って？」
困ったように目を細める翔さんに驚かされていると、そっと肩を包むように抱かれる。
「本当バカだね、カズ」
耳元の囁きは優しくて、信じられない気持ちで両腕をゆっくり上げるけど、
「何もわかっていないね」
なんの感情も伺えない声に、それを止めた。
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こう(プロフ) - 結奏さん» 結奏さん、感想頂きありがとうございます！最後までお付き合いくださり、光栄です(^^)とにかく美しき悪魔・翔が書きたく、二宮さんも実はその遺伝子が一緒だった…が伝わっていれば嬉しいです。大野さんは勝手にラスボスになって頂きました。またお付き合いください♪ (2018年4月7日 22時) (
レス) id: 0fd2c64cf7 (このIDを非表示/違反報告)
結奏(プロフ) - こうさんこんばんは。ずっと楽しく読ませていただいておりました。翔さんの考えが読めずどきどきしましたが、翔さんが幸せを手に入れてくれるラストにほっとしました。すべてを分かっていそうな大野さん、さすがです…笑 (2018年3月25日 2時) (レス) id: a836a5dda1 (このIDを非表示/違反報告)
こう(プロフ) - とわさん» はじめましてー！感想ありがとうございます(*^^*)他の作品も読んで頂けてるなんて…本当更新遅くてすみません(今更 ; 最後までお読みくださると幸いです！感想頂けるとかなりやる気でるので、またお待ちしてますー♪ (2016年10月21日 0時) (レス) id: 582833fda4 (このIDを非表示/違反報告)
とわ(プロフ) - こうさん、初めまして。とわ、と申します。こうさんの作品をずっと前から読ませていただいていました。涙なしには読めないような作品もあれば、今回のようにドキドキする作品もあり、本当に作品の幅が広い方だなと勝手に感動しておりました。続きを楽しみにしています。 (2016年10月19日 13時) (レス) id: 6912f85516 (このIDを非表示/違反報告)
こう(プロフ) - 碧李さん» 碧李さんっ！感想ありがとうございます♪その胸の高鳴り、大事にしたいです(笑)パラレルに不慣れすぎて私が先が見えてくなってるかもですが（ｵｲ 、読ませないように必死になってます；ﾆﾉﾐﾔさんがこれから大いに振り回されますので彼の目線で楽しんで下さいませ♪ (2015年11月25日 1時) (レス) id: 0740dc5a96 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こう | 作成日時：2015年8月17日 20時
