>>11. ページ12
「―――離して」
「いやだ」
「ねぇ、離して」
「いやだ」
押し問答。
どうしても、互いが互いの主張を聞き入れない。
「離して、もう帰るの」
「いやだ、離さない」
ただでさえないに等しい状態だった心の余裕が見る見るうちになくなり、溢れ出そうとしている。
嗚咽交じりの私の呼吸が静かな教室に響いた。
「――っ、離してよ！帰るの、帰りたいの!!」
ついに抑えきれなくなった感情が爆発し、思わず体に回されていた腕を無理やり払いのける。
既に帰る準備が整っていたカバンをひったくる様に机からとると、速足で教室を出る。
後ろに立つ陽斗には、目もむけずに。
「……っ、A」
……―――ねえ、どうして？
どうしてあなたは、いつも私の心をかき乱すの？
私の心をいとも簡単に惹きつけてしまうの？
私が抱くその想いは私の心に絡まりついて、遂にはほどけなくなってしまった。
あなたはそれを分かってる？
もがけばもがく程深く沈んでいく底なし沼の中に、私は引きずり込まれていく。
あなたを見る度、苦しい。声を聴く度、苦しい。
でもあなたの温もりは、私の心を軽くして、あっためて、甘くしてくれる。
分かってる？
あなたのその一言一句、一挙一動が私の想いを加速させていることを。
もしもあなたにその気がないのなら、お願いだからその手を離して。
「………なに？」
それでもどこか期待をして、私はあなたを許してしまう。
その声は、不安と期待が同時に存在する矛盾した私の心をそのまま映していた。
それくらい、私の声はしょうもなく震えていた。
(ふたつの鼓動が共鳴するとき)
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作者名：ここなっつ | 作者ホームページ：
作成日時：2017年1月12日 0時
