愛してるって言えるのは…5 (ページ1)

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Aは、市役所の福祉課の相談員だった。

金銭的に苦しい家庭や独居老人、高齢世帯夫婦等、生活困窮者の色々な相談を受けるところ。

優秀だったAは他の職員よりも担当ケース数は多く、より難しいケースを持っていた。

その男が相談に訪れたのは、ある日の昼休み、突然だった。

引っ越してきたのはごく最近。

履歴を見ると、転々としている様子だった。

たまたま、その日、お昼当番で残っていたことで、Aが話を聞くことになった。

男がメンタルに問題を抱えていることにすぐにAは気づいた。

精神科への受診を繰り返し勧めた。

男は受診せず、その日を皮切りに、毎日電話か役所にAに相談に来るようになった。

男がAを気に入ったのは誰の目から見ても明らかだった。

でも、当時、Aの職場は人員不足だった。

A以外の職員は経験も浅く、上司は担当を変える決断には至らなかった。

元々弱音を吐かない人だったのが悪循環に拍車をかけた。

Aなら、何とかうまくやってくれるだろう、皆そう思ってしまった。