54(諸伏景光/番外編4) ページ6
一方アリシアは少し驚いたように自分の姿を見ながら口を開いた。
「あぁ、このシャツね？間違えて乾燥機にかけたら縮んでしまって・・・。けれどこれくらいタイトなものは、FBIアカデミーでは皆んな普通に着てたから、気にしてなかった。日本ではダメ？」
「乾燥機・・・アリシア、まさかとは思うが、もしかして料理しかり洗濯とか家事全般が苦手なのか？」
「自慢じゃないけれど、蝶よ花よと育てられたから家事なんてした事ほとんどないの。親が亡くなった後も家事代行に頼んだりクリーニング出したりしていたから余計にね。」
「あぁ、それでか・・・何だか納得だ。って、話が逸れたな。兎に角だ、これからはそういうタイトな服は避けてくれ。」
諸伏は照れ臭そうにそっぽを向きながら、アリシアの手に持ってきたシャツを押し付けた。
「・・・もしかして、景光クラブの時の事故を気にしてるの？」
「！！？ち・・・違う！！」
図星を突かれた諸伏は顔を更に真っ赤にさせて必死に否定してみせた。が、それは逆効果で肯定しているようなものだった。
アメリカ育ちのアリシアにとって諸伏の反応はとても可愛らしく新鮮に思えて仕方なかった。何故ならば向こうは性に関して基本的にオープン故に、このような奥ゆかしい羞恥など持ち合わせる男性は少ない。だが、あえてアリシアはこの事は口にせず、黙って諸伏のシャツを受け取った。
「・・・他の誰でもない景光の頼みなら断れない。このシャツ借りるわね。これからは気をつける。」
「あ・・あぁ。分かってくれたなら良かった。」
諸伏に背を向けて女子トイレに入ろうとした所で、アリシアはクルリと振り返る。金色の髪がフワリと揺れる。
諸伏は振り向いたアリシアの碧眼の瞳を見つめる。
「私あなたのそういう真面目なところ、とても好きよ。」
「！！！？」
淡々としかし、はっきりとそう述べたアリシアは今度こそお手洗いへと着替えに消えた。
廊下に残された諸伏は、今度は別の意味で顔を真っ赤にさて頭を抱えているのを彼女は知らない。
好きというのは、LikeなのかLoveなのか・・・
諸伏景光の葛藤はまだまだ続きそうだった。
番外編 景光の葛藤 END
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作者名：ユウナ | 作成日時：2019年7月18日 21時
