52(諸伏景光/番外編2) ページ4
「お前らいい加減にしろ。」
「そうだぞ事故だと言ってるんだから。」
見兼ねた降谷と伊達が助け船を出すと、諸伏は安堵の表情をうかべた。
「たかが胸に触れたぐらいで、あなた達男性は何故そこまで騒げるのか私には到底理解できない。」
「「「アリシア!?」」」
噂をすれば何とやら・・・張本人であるアリシアが5人の背後から突然現れ声をかけてきたのだ。
「景光、あれは事故。私は気にしてないから謝罪はいらない。何より私達は成人済みで、私は処女でもないわ。たかが胸の一つや二つ触れられたぐらいで騒ぐのはどうかしている。あれは言わばただの脂肪の塊よ。」
普通の女性なら、このようなデリケートな話を論理的に述べる事はないだろうし、もっと恥じらうのだろうが、やはりアリシアは違った。
諸伏は自分が恥ずかしがっているのがバカらしくなるほどに、アリシアは気にもとめていなかったのだ。
「バカいえアリシア。胸には男の夢と希望が詰まってんだよ。」
松田のツッコミ箇所に他男性4人はいささか疑問に思いながらも、アリシアは興味なさげに松田をみた。
「フーン・・・くだらない。景光、また後ほど図書室で。」
「あ・・・あぁ。また後で。」
嘲笑うかのごとく松田に言い放てば、アリシアは諸伏達を追い越して颯爽と学生寮へと歩いて行った。
「可愛げがないな。やっぱりあいつ中身男だわ。もう少し恥じらうんじゃねぇーの普通?」
「まぁ、そうだな。けれど、この男社会で生きていくにはあれぐらいタフじゃないとな?」
松田がつまらなさそうに頭の後ろで手を組みながら言えば、伊達は呆れたようにいった。
諸伏自身も松田と同意見で、もう少しアリシアには恥じらいを持って欲しかったし気にして欲しかった。
正確にいえば、諸伏は自分を男だとアリシアに意識して欲しかったのだ。更に諸伏の気持ちをモヤモヤとさせたのは彼女が『私は処女ではない』と平然とカミングアウトした事だ。
どうしてこんなに気持ちが晴れないのか、その原因に諸伏は薄々気づき始めている。
けれど、それを明確に出来ないのはこの6人で過ごす時間を大切にしたいと思う諸伏の思いもあるからで、彼は心の中でしばしば葛藤する機会が増えていた。
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作者名:ユウナ | 作成日時:2019年7月18日 21時