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(※風見視点)
ゲーム内で初めて神原を見かけた時の事を、風見は思い出していた。
モンスターに追いかけられ、瀕死になりかけていた彼女の救出に駆けつけたのだが、ジョブを変えるのをわすれ、非戦闘ジョブで加勢し共倒れしてしまった。
こんな失態を犯した自分に対して攻めることも幻滅することもなく、『助けようとしてくれた行為そのもが嬉しかった』と感謝を述べてくれた。
それからともにストーリーを進めたり、イベントに参加したり、ダンジョンを攻略する仲になり、彼女は周りの人に気を使わせないように言葉を選び、パーティーを組んだ時、自信のなさそうなプレイヤーがいれば『あなたがいてくれて助かった』と思いやりのあふれた声掛けもしていた。
そんな彼女の言動を風見はいつも見ていたのだ。だからこそ姿は見えずとも、彼女の人柄に惹かれていたのだ。
「神原さんなら、きっと、自分の理想とする人になれると思いますよ。優しくて気が利いて、人の話も受け入れながら自分の意見も言える。今でも十分に素敵な人だと思います。」
風見は真っすぐに神原を見つめながら言った。
「風見さん・・・。」
神原は少し頬を紅くし恥ずかしそうに笑うと、風見自身もなんと恥ずかしい言葉をさらっと述べたものだと気づき神原以上に顔を紅くした。
「なんだか、こうやってゆっくりとお話しするのが初めてのはずなのに、私の事前々から知ってるような口ぶりですね?」
「え!!いや!!そんなことは・・!」
神原が照れ隠しに述べた言葉を風見は真に受けて、もしかしてばれたのか?とドキリとしてしまった。
「さすが、警察官!やっぱり、正義の味方はいう事が違いますね!」
「・・・あ、はははは。そうですかね?」
バレていないと分かった風見は胸を撫でおろした。
「風見さんは、お仕事順調ですか?というか、お仕事柄あまり詳しくはお答えできないかとお察ししますので、遠慮なくそう言ってくださいね。」
「お気遣い、ありがとうございます。そうですね、一応守秘義務がありますので、詳しくはお話しはできなくて・・。」
「そうですよね。それにしても、大変ですね。どんなに辛いことや、大変なことがあっても、人に話すことができないというのは。どうやって乗り越えるんですか?」
「それはまぁ、慣れですかね。あとは、自分の場合は上司ができる人で、たまに飲みに連れて行ってもらい、そこで話を聞いてもらったりしています。」
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作者名:ユウナ | 作成日時:2019年8月8日 9時