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(※風見視点)

風見は頭をフル回転させて考えていた。

(自分もプレイヤーであることをそれとなく仄めかしてみようか?それでID交換して、もしかしてとお互いに気づくとか?)

(いやいや待て。さっき神原さんは『風見さんはゲームとかあまりしなさそうな印象』といっていたではないか?もし、ゲームをしていること自体に幻滅し、まさか一緒にプレイしていたのがこんなアラサーの独身男だと知り、気持ち悪がられるのでは?それに今日は何より、ミスが多すぎる。これ以上失態をさらす訳にはいかない。)

風見は眼鏡をかけ直しながら慎重にいこう、落ち着け自分と言い聞かせ、お冷を一気に飲み干した。

(しばらくは打ち明けずにおこう。様子をみて、情報をあつめねば。そうだ、俺は国家を守る公安警察だ。今までいくらでも修羅場を潜り抜けてきたではないか)

(今こそ、その経験を生かす時ではないか!?)

奥手な風見は、慎重に情報を集める事を決意し、ふぅーと誰にも聞こえないような深呼吸をすると、ちょうど神原が電話から戻ってきた。

「すいません、風見さん。ちょっと仕事のことで。」

「おかえりなさい、いえいえ、大丈夫ですよ。お仕事大変そうですね?」

「えぇ!そうなんですよ!今年入れ替わった上司が、本当にパワハラギリギリの言動をしてきて!自分勝手すぎて、職場のみんなが振り回されているんです!」

神原はよくぞ聞いてくれたと言わんばかりに、ため息交じりに話し始めた。
虫の居所が悪いと何かにつけて部下に八つ当たりすること、指示通りに資料を作成編集してもいちゃもんをつけられること、今年に入ってから同じ部署の人間が3人も辞めたこと、そして今は矛先が自分にむいていることなどなど・・。

「それは酷い話ですね。さぞお辛いでしょう。」

「風見さんにそう言ってもらえるだけで、なんだか気持ちが落ち着きました。けれど、本当に嫌なのは、上司に対してはっきりと言い返せない自分自身なんですよね。」

一通り愚痴を零した神原はどこか悔しそうに最後にぽつりとつけたした。

「きっと今の世の中って理不尽なことって沢山あって当たり前で、だからこそ負けない強い自分でいなくちゃいけないって思うんです。男性、女性、性別なんて関係なくて、それは人として持ち合わせていかなくちゃいけない強さだと思うんです。」

風見は神原の真っすぐな言葉を聞き、彼女の中に秘められた強さを感じ、ゲーム中では見えなかった彼女の新たな一面に更に好感を抱いた。

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作者名:ユウナ | 作成日時:2019年8月8日 9時

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