226話 ページ26
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
1曲目が終わった瞬間にバチンと再び会場の電気が消えて。
次に聞こえたのは優しいギターの音。
先程の眩いスポットライトのような光ではなく、優しいオレンジの光が舞台上に差し込んで。
体育館は今度はライブ会場ではなくて、ひとつの家の中のような風景に変わる。
舞台の上には、セーラー服に衣装を着替えた磁磁気先輩と、髪を下ろして後ろでハーフアップにしている茶色のセーターを着たプレゼントマイクがギターを持ってひとつのソファーに座っている。
あ、これ。
「映画の…！」
そう、今度上映されるプレゼントマイクと磁磁気先輩が主演の映画予告と同じ服装で。
ゆっくりとマイク先生が弾き始めたのは耳馴染みのある優しいイントロ。
映画の予告で度々流されているこのイントロに、先程まで歓声を上げていた観客たちは静かに聞き入る。
磁磁気先輩は静かにソファーに座っていて。
ゆっくりと息を吸ったプレゼントマイクが歌い出す。
「うま………。」
優しそうで寂しいフレーズが、マイク先生の馬鹿騒ぎしているいつもの声とは違う、柔らかな低音で流れていく。
"「ただいま。」と「おかえり。」の話。"
今度の映画のテーマはこのフレーズで。
1番は娘へ「おかえり。」っていう父親の気持ちを優しくマイク先生が歌い上げて。
2番に移ると磁磁気先輩がギターも歌も受け取って、今度は娘の父を思う気持ちを不器用に歌う。
段々と、娘が分かっていなかった「おかえり。」の大切さに気がついていくその感情を、磁磁気先輩が一語一語大切に歌っていく。
3番は、2人で「おかえり。」の言葉の温かみを歌って。
優しい音と共に弦を止めるキュィ、という音で、ゆっくりとスポットライトが消えていく。
その瞬間、爆発的な拍手が巻き起こって。
あまりの圧巻の弾き語りに、僕は拍手することも忘れて、ただ呆然と2人の温かさに浸っていた。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
SEKAI NO OWARIのfamilyという曲をテーマに書かせて頂きました。
本当に大好きな曲なのでもし良かったら聞いてみてください。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1003人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
co_sa_(プロフ) - 花璋さん» ありがとうございます……！！！映画のシーンとても大切に書いたので凄く嬉しいです……！！！ありがとうございます……！！ (2022年12月6日 8時) (
レス) @page48 id: 4ca7e9942b (このIDを非表示/違反報告)
花璋(プロフ) - 毎日の更新がとても嬉しくて日々の楽しみです。今回の映画、脳内でまざまざと想像できてうるっときてしまいました。いつも感動的な話をありがとうございます (2022年12月4日 18時) (レス) @page42 id: 7ebade7fdf (このIDを非表示/違反報告)
co_sa_(プロフ) - LANさん» ありがとうございます………！！かなり力を入れて書いたのですごい嬉しいです…！！！これからもよろしくお願い致します…！！！ (2022年12月1日 16時) (レス) @page32 id: 4ca7e9942b (このIDを非表示/違反報告)
LAN(プロフ) - あと、個人的に文化祭のJIJIのライブのシーン大好きです！今まで見たヒロアカの作品の中で1番です！ (2022年11月30日 20時) (レス) id: 46881bcb40 (このIDを非表示/違反報告)
LAN(プロフ) - 毎日更新楽しみにしてます！めっちゃおもしろい！！作者さん神様だぁ〜と思いながら見てます笑これからも楽しみに更新待ってます！ (2022年11月30日 20時) (レス) @page29 id: 46881bcb40 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：co_sa_ | 作成日時：2022年11月22日 6時
