嘯く ページ7
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とある戦闘訓練の日。
その前日に一人暮らしの家に唐突にやってきた母親が私の貯金を奪っていった。そんな理不尽があるものかと抵抗したが、其奴の個性によってあえなく拘束。挙句肩や腹部に大きな痣ができるに至った。
お陰様で戦闘訓練で強い痛みが走る度に彼奴の顔を思い出して歯軋りをしてしまった。
「Aー！今日皆でカラオケ行くんだけど一緒に来ない！？」
帰る支度をしていると芦戸さんにそう声をかけられた。その隣の麗日さんも目をキラキラさせて此方を見ている。
「ぁ.....ごめん、用事あって」
戦闘訓練で傷を負ったという体にして保健室に立ち寄ろうと思っていた為、断る。
用事がなくてもそういうのはまだ慣れない、どうせ断っていただろうけど。
「えぇ〜残念...Aいつもすぐ帰っちゃうんだもん」
「いつかAちゃんとも遊びたいねぇ」
「ごめん、じゃあ急いでるからまた」
分かりやすく肩を落とした二人には申し訳なく思いつつ、早々に教室を出る。否、出ようとした。
「おい」
勢いよく手首を掴まれ、思わず顔を顰めてその相手を睨んでしまう。
「......何か用？爆豪くん」
彼の突然の行動に、まだ教室に残っていた皆が騒ぎたつ。爆豪くんと一緒にいた上鳴くんや瀬呂くん、峰田くんは冷やかしを入れ、切島くんは不思議そうにしている。
たが彼の次の言葉で水を打ったように静かになった。
「テメェ怪我してンだろ」
「してないよ」
その鋭い指摘に焦って食い気味に答えてしまう。
｢え、そうなん？A大丈夫？｣
上鳴くんが打って変わって心配そうに覗き込んでくる。
笑顔のまま気にしないで、と答えれば微妙な顔をされてしまった。
｢何処見てそう思ったのか分からないけど、何ともないから帰るね｣
そう言って落ちかけた鞄を肩にかける。
そのまま逃げるように教室を去っていった。
何がしたかったのか、その後爆豪くんが後を追って来ることは無かった。
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続く
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作者名：コルネイユ | 作成日時：2023年3月4日 16時
