.(修正箇所あり) ページ23
.
｢ま、シャオロンがそこまで言うんも珍しいしこれ以上は言及せんけど。さっきから見てても警戒心が強いだけ。結局人に逆らえへんみたいやしな｣
｢やろ！？やっぱオスマン分かっとるやん｣
そんなことを言われても、腹が立つことは無かった。思い返してみればここの人達と話しているとつい彼等の望む回答をしてしまう。此処に来る前も、両親に逆らったのは昨夜が最初で最後だった。心の中では思うことがあっても、それを出せないのは私が傷つくのが怖いだけの臆病者だからなのだろう。
今まで目を背けていた事実を、会って一日も経っていない彼等に見透かされて胸が苦しくなった。
ふと、臓腑が締め付けられるような感覚に陥る。それと同時に全身を駆け巡る寒気に、肩を震わした。
その原因を探る前にピ、と自分の左側で空を切る音がしたと思うと、緑色のフードを深く被った人と目があった。その途端にぃ、とゆっくりと口角をあげたその男の目元は晒されていないのに、その恐ろしい視線に射竦められた。
たら、と生暖かい感覚が頬を伝ったことに気づいた途端、頬から耳にかけて、熱い痛みが走った。
｢.....っいた｣
シャオロンさんの手を振り解いて反射で手をやると赤い液体が付着し、へ、と掠れた声が漏れた。それと同時にシャオロンさんが口を開く。
｢ゾムお前......殺気隠せや。コイツ震えてんで｣
そういったシャオロンさんは先端に少し血が付着したナイフを手にしており、そのままゾム、と呼ばれた男の方に投げていた。恐らく投げ返した、という表現の方が正しいのだと推測する。
シャオロンさんは一度も席を立っていない。落ちたナイフを拾ったわけでないのなら、私の横を掠めた直後、私の手を握っていたのと反対の手でナイフを止めたのだろう。それが出来たのならなぜ身を切る前に止めてくれなかったのか。そんな疑問を口にする図々しさは持ち合わせておらず、肩を震わす私の腰に手を回したシャオロンさんにされるがままになっていた。
｢A痛ない？大丈夫？｣
そう言ってシャオロンさんは私の方に身を寄せて傷口を見ている。痛いけれど、取り敢えずその言葉に頷くと、そか、と一言返ってきた。それとほぼ同時に先程とは違う生暖かい感覚が傷口を襲う。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 161人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
コルネイユ(プロフ) - 塩田さん» 塩田さん初めまして、コメント頂き有難うございます。前作も読んで頂き、その様なお言葉も頂けて作者冥利に尽きます...本当に嬉しく思います🥰塩田さんのような読者の方がいて下さるお陰で頑張ることが出来ています、今後も作品共々宜しくお願い致します...！ (2023年3月14日 19時) (
レス) id: 4edc66b9fe (このIDを非表示/違反報告)
塩田(プロフ) - コルネイユさん、こんばんは。この作品、更新される度にじっくり大切に読むくらい大好きだったので、また公開してくれて凄く嬉しいです😭 これからも頑張ってください…！ (2023年3月14日 0時) (レス) @page40 id: 9daab44624 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：コルネイユ | 作成日時：2023年3月7日 14時
