プロローグ ページ1
薄暗い月明かりが辺りを照らしていた。
背の高い雑草がゆらゆらと揺れ、草むらから何か大きい生物が走り抜ける。
嫌な夜だ。
窓の外を眺めていた男は、そう感想を持った。
「セブルス」
「我が君」
向き直った男は艶めかしく呼びかける主人の言葉に頭を垂れ、一歩前に進み出る。
我が君と呼ばれた男は、世界一美しいようでいて恐ろしく醜く、高価そうな机に古い本を広げていた。
その名はトム・マールヴォロ・リドル。またの名を、ヴォルデモートと言った。
「古い文献から興味深い記述を見つけたのだ」
ヴォルデモートは語り始めた。
「この世界とは異なるどこか、異なる時空の遥か彼方に、この世界を思う者が多くいると言う」
「俺様はしばらく前から、その者たちの様子を伺っていた」
「そしてついに見つけたのだ」
そのまま押し黙るヴォルデモート。何をでしょう？と問うような男の表情に満足したのか、また勿体ぶって口を開いた。
「この世界で起こることの記憶を全て持っており、お前に恋焦がれる者だ」
男はまだよく飲み込めていないのか、眉を少し動かした。
「俺様に焦がれる者はこの世界にも幾らでも居る。だが、そんなものは面倒なだけだと思うだろう？セブルス」
続いてヴォルデモートの口から流れ出たのは、あまりにも予想外の発言だった。
「この娘には俺様の血を分ける」
「俺様の命に従い、お前はこの娘を思い通りに動かすのだ」
驚いた表情を見せた男だったが、全てを飲み込んだように恭しく頭を下げる。
「あなたの望むままに___我が君」
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作者名：コーデリア | 作成日時：2021年12月18日 13時
