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「そらるさん、わたし引っ越す」
彼女が放ったその言葉。
急なその言葉におれは固まってしまった。パタパタと走って行った彼女を目で追いかける。
なんで、おれに言った
そう聞いても答えてくれないのは、俺が男だからなのか俺がもっとお前と仲良くなってたら教えてくれたのかもしれない。
走って絆創膏を取りに行った彼女を見ながら歩いて救護テントの方へと向かった。
「そらるさーーん、絆創膏もらってきたよ」
絆創膏を受け取り、自分の足に貼った。
Aも同じように足に貼ったあと掌に貼ろうとしたが、怪我をしたのが利き手で貼りにくいのかごたついていた。
「貼ってやろうか?」
「まじ、頼んだ」
彼女の手に触れた。
俺よりも柔らかくて、さらっとしたその手に触れた。綺麗だったはずの彼女の手に傷をつけてしまったことが、本当に嫌だった。
引っ越すのって、もうすぐじゃんかよ……
* * *
なにもなく、
時間が過ぎて体育祭も終わってしまった。
もし、体育祭で勝つことが出来たら告白でもしようかな、なんて思いもあった。けれど、勝つことはなかった。
体育祭が終わってから、教室やロッカーに置きっぱなしだった荷物をまとめていた。グラウンド側はまだ賑わっているままで、自分一人だけここから離れなければならないことにうんざりとする。
「こんな荷物多かったっけ…………」
空になったロッカーはただただ虚しい。
体育祭後で疲れも溜まっていた。全てを持って帰る気にもなれない私は荷物を少し残して帰ることにした。
次の日、私は荷物を教室に取りに来た。
先生以外いない学校で一人まとめていた。教卓の上には昨日先生が置きに来たのか、なかったはずのプリントが置いてあった。机の上の落書きが目に入る。
「…………いや、落書きは残しておいてもいいか」
どうせだし、なんか付けたそう。
んー何かのキャラでもいいし、最後のメッセージでもいいなぁ……
シャーペンを取り出して、机に描く。
あんぱんのヒーローではなくて、その敵にごめんねとメッセージを添えてシャーペンを手から離した。
机に滴が落ちた。
「………な、でだよ……もう」
あぁ、だめだ。湿っぽくなってしまう。
ガタン、と立ち上がり窓を開けた。
そこに、
そらるさんが来て涙も何かも吹き飛んで行ったのだ。
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しろもん* - すごく良い作品ばかりで、ひたすら感動していました。私は、最後のお話が好みです。でも、本当にどの作品も素晴らしかったです。 (2020年1月21日 23時) (レス) id: 36bbb34c6c (このIDを非表示/違反報告)
アヤノ(プロフ) - 涙がボロボロで止まらなかったです。描写もどのお話も素晴らしく、Bバージョンもとても楽しみです。 (2020年1月19日 0時) (レス) id: b204067585 (このIDを非表示/違反報告)
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