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僕らは十八歳になった。
彼女の思春期も僕の反抗期も乗り越えて、やっと、幼い頃とおんなじ間合いで幼い頃とは違う会話が出来るようになった。
Aは更に綺麗になった。
瞳も髪色も手足も。小さい頃のまんま、綺麗になっていった。...ただ、やんちゃなのも小さい頃と変わらぬまま。
僕が―自分で言うのも恥ずかしい限りだが―反抗期でしばらく荒れて、ようやっと落ち着いてきちんとAと対面したとき。
「ねぇ、また木登りしよ!」
そう言って僕の手を引いたときは、さすがに面食らったものだ―――――――だけど。
だけど。
彼女は変わらなかったんじゃない。
変わりたくなかったんだ、と。
――――――数段、高価な衣装で飾り付けられ。
重たそうな、手の込んだ刺繍の入った正装の袖を引き摺りながら。
そして、その瞳も笑顔もAらしさの全てを。
呪印が印字された紙で覆い隠している彼女を見て、そう思った。
「...あ、天月!」
A、とそう声をかけてからのしばらくの間も。
一音、僕の名前を出したときの声の震えも。
その後の僅かに湿った音、その全てで、紙に隠された彼女の表情を推し量ってしまうくらいに。
僕はAのことが好きだったんだと、同時に思った。
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しろもん* - すごく良い作品ばかりで、ひたすら感動していました。私は、最後のお話が好みです。でも、本当にどの作品も素晴らしかったです。 (2020年1月21日 23時) (レス) id: 36bbb34c6c (このIDを非表示/違反報告)
アヤノ(プロフ) - 涙がボロボロで止まらなかったです。描写もどのお話も素晴らしく、Bバージョンもとても楽しみです。 (2020年1月19日 0時) (レス) id: b204067585 (このIDを非表示/違反報告)
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