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彼は、まふ君。ネットなんかで検索すれば一番最初にサジェストに出てくるくらいには有名な人。その実態はというと、一日中家に引きこもり、難しい顔をしながらパソコンをいじり、ギターを弾いてゲームして、わりと楽しそうな人生。
＿ここまでは、よく知られている事実。
実は意外と狡い人なんだよね、まふ君。出会ってからかれこれ数年間片想いしていたわたしの気持ちを端から見透かしていて、その上でわたしにまるで恋人とするようなこと、要求してくる。きっと自分が彼女なんて作ったら大変なことになるけど、そういった経験がしたいからといったとこだろうか。それが自分の活動の為なのか私利私欲の為なのかはわからないんだけど。
「…まふ君、風邪引いちゃうよ」
「あ、A、起きてたの」
案の定、彼はベランダにいた。いつものように、そこらへんの安い煙草と、遠い昔に買ってまだ気に入ってわたしの部屋に置いてってるアコースティックをぽろぽろと鳴らして。煙草を咥えてるこの姿、きっと誰も想像したことないんだろうな。
夜風がいい感じに吹いていて、けどやっぱり肌寒く感じるんじゃないだろうか、なんて、そんな心配。全然食べない人だから時々ご飯作りに行ってるんだけど、やっぱり音楽の方が大事で、それしか考えらんないんだろうなぁ。わたしにとってのまふ君みたいに、さ。こんなことしてるわたし、多分学生の頃じゃ考えもつかなかっただろうなぁ。ほんとはもっと安定した職について、もうちょっとまともな人生送るつもりだったんだけど、どこで踏み外したんだか。まぁでも、このわたしが嫌いなわけじゃないもんな。
「…今度のドーム、どんな感じ？」
「んー…まだわかんないけど、多分、いい感じ。」
ぽやぽやとしたトーンの会話に、どことない非日常を覚えた。わたしも裸足でベランダに出て、彼の隣に座る＿同じものが、見える気がして。幹線道路が近いからか、風を切る音が近くで鳴っている。それが余計に寒さを増幅させているような気もして、少しだけ彼の方に身を寄せてみた。まぁもちろん、無反応なんだけど。
「…ねぇ、A？」
「んー？」
「僕たち、いつまでこんななんだろうね」
思わず、彼の顔を見てしまった。きっと、何気なしに放った言葉なんだろう。重みも何も感じられない。ただ、核心を突かれたように聞こえてしまったんだ、図星ってやつ。まふ君の傷んだ髪が目に映って、視界が紫煙で滲む。悲しいな、こんな言葉一つで傷付くくらいわたしって弱かったっけ。
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しろもん* - すごく良い作品ばかりで、ひたすら感動していました。私は、最後のお話が好みです。でも、本当にどの作品も素晴らしかったです。 (2020年1月21日 23時) (
レス) id: 36bbb34c6c (このIDを非表示/違反報告)
アヤノ(プロフ) - 涙がボロボロで止まらなかったです。描写もどのお話も素晴らしく、Bバージョンもとても楽しみです。 (2020年1月19日 0時) (レス) id: b204067585 (このIDを非表示/違反報告)
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