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私が好きな人は”センラ”と言う男の人である。
彼は私のことを助けてくれた人生で一番大切な存在なのだ。
私は過去に大好きで、一番憎らし人を手にかけた。
その人間は酷い人間だった。
私達のような少し変わった人間は希少種として裏取引で売買されたり、体の一部を売られて高値で買われたり。闇オークションのような所で扱われることが多い。
私は桃色の長い髪に二本の小さな角、桃色の瞳を持つという希少な種族であった。
そんな私達は普通の人間の私利私欲のために殺されたり内臓を売られたり、角を抜いて売られたり。
そんな種族であった。
そのため私は母親と二人で隠れて教会で生活していたのだが、一人の男によって教会が壊されて私達はその男に連れて行かれてしまった。
男は表向きはとある活動団体のリーダーであったが、裏では名高いオークション主として名を馳せていた。
私達は良いように扱われて、母親は目の前で殺された。
けれど私は彼に身体を求められて何度も身体を重ねたし、彼の専属の従者にもなった。
全ては逆らえなかったから。
けれど、それをセンラが助けてくれたのだ。
センラがその男を殺す手助けをしてくれた。
私は私達のような種族の仇と思って男を殺した。
きっといつの間にか身体を重ねて行く内に間違った恋情が芽生えてしまっていたのだろう。殺す時は酷く泣いていたが。
「9番、夕食だ」
鉄格子の前に置かれた夕食と呼ばれるものは少し豪華なようにも思えた。
まだここに来たばかりの頃。刑務所飯と呼ばれるものは美味しいとはお世辞にも言えなかった。
それを長らく文句を言い続けていたらいつもの看守サンが他の看守の目を盗んで美味しい夕食を用意してくれるようになった。
やっぱり、私のこと大好きじゃん。看守サン。
夜の牢獄。
空空寂々としていて、つまらない。
「看守サン、私の事大好きでしょ」
「……はぁ?そんな訳あらへんやろ殺すぞ」
「今の間。図星でしょ」
「お前の能天気さに戸惑っただけや阿呆」
「それもいつものことなのに戸惑う訳ないよね。ハイ論破」
面白くて可愛くて、ついついからかってしまう。
これが普通の看守と囚人、じゃなくて友人だったなら良かったのに。
そう思っても私が生まれた種族が種族なのだから叶いもしない夢だけれど。
私が勝手に始めた勝負。
これで私が看守サンのことを大好きだ、なんて思ってしまえば負けだと思ったけれど。
もうとっくに看守サンと友人になりたかった、だなんて思っている時点で負けだ。
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しろもん* - すごく良い作品ばかりで、ひたすら感動していました。私は、最後のお話が好みです。でも、本当にどの作品も素晴らしかったです。 (2020年1月21日 23時) (レス) id: 36bbb34c6c (このIDを非表示/違反報告)
アヤノ(プロフ) - 涙がボロボロで止まらなかったです。描写もどのお話も素晴らしく、Bバージョンもとても楽しみです。 (2020年1月19日 0時) (レス) id: b204067585 (このIDを非表示/違反報告)
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