01 ページ4
第一部 序章 はじまりの花
「ちちちち遅刻だよ！」
どうして起こしてくれなかったのお父さん、お母さん！ あ、お父さんはもう仕事だ。どうして起こしてくれなかったのお母さん！ 明日は学校に行くって昨日の夜言ったはずなのに！ 両こぶしを握りながらキッチンに立つ母の背に問いかけてみる。頭の中では真逆なことを考えていると、声で気づかれているだろうか。我ながら子どもらしい言い訳だ。
学校に行くと宣言しておきながら、目覚ましのセットも忘れて眠りこけていたのは他でもない自分自身だった。昨日まで病人だった人物を、両親はむりに起こそうとするだろうか。
『ルールは大事だ、遅刻は悪だ』などという考えを持ちあわせてはいなくとも、両親の前でした宣言は守りたいものだ。慌ただしい足音をたてては朝の第一声が騒がしくなったのは、まさしく悪の行為をしたからだった。
そんな私についてはなにも触れることなく、母は穏やかに微笑んでいた。手が額に触れる。
「あらA、おはよう」
「おはよう。お母さん」
「よかった。もうすっかり平熱ね。学校は行けそう？ 連絡はしていないよ」
「うん、もうすっかり元気だよ。その……心配かけてごめんね。長い間寝込んじゃったし」
目線は、なんだか逸らしたくなってしまう。目を見て言った方が気持ちが伝わりやすいと分かってはいても、心に残る悪の存在のせいか、変なけ恥ずかしさのせいか。
縮こまった姿勢になっていた私を母が抱き締めた。あたたかい。胸の音が聞こえる。どこからか自分の胸の音も聞こえてきた。揃う気配はない。久しぶりの温もりに目を閉じた。
「こうするのも久しぶりね」
「うん」
「いま朝ごはん用意するわね」
時計は、もうとっくに授業が始まっている時間を指していた。お互いに構うことなく、動こうと思いながらももう少しだけ抱き合った。
朝からしっかり食べる方ではなくとも、固形物に飢えたお腹は鳴き声をあげていた。
かれこれ数ヶ月は学校を休んでいたことになるのだろうか。みんな、元気かな。天馬はもう帰ってきているはずだよね。
考えを巡らせていると、ことんと器が机に置かれた。あたたかそうな湯気を立ち昇らせて、黄金色の液体が揺れる。卵と緑色も添えてあった。この匂いはきっとコンソメだ。
「菜の花の卵スープよ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 100人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
見卯＊..+*(プロフ) - 宮野冬姫さん» お返事遅れてごめんなさい🙇♀️ ヤム・ハ・メラハの件については修正を入れて姿を消していますが、そのうちまた出てくると思います。関連は薄いですが、その時は葉王に思いを馳せながら読んで頂けると嬉しいです......☺️ (2022年9月7日 20時) (
レス) id: e1b9a46973 (このIDを非表示/違反報告)
宮野冬姫(プロフ) - 今気づいたけど、葉王って……ﾌﾟｰｸｽｸｽ← (2022年8月24日 15時) (レス) @page24 id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
宮野冬姫(プロフ) - もちろんイナズマイレブンシリーズについても……グヘヘ(( (2022年8月24日 15時) (レス) @page24 id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
宮野冬姫(プロフ) - 語り合いたいですぅ！！ (2022年8月24日 15時) (レス) id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
宮野冬姫(プロフ) - そうだったんですか！マギを知ってるなんてメチャクチャ嬉しい！！！ (2022年8月24日 15時) (レス) id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：見卯＊..+* | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/miumiu01/
作成日時：2022年7月19日 20時
