・ ページ10
(あっぶね〜、上手くごまかせた！)
冗談か〜と納得している様子の優さんを見て安心した。
優さんはオレの尊敬する言わば師匠のような人だ。頭が良くてオレの受験勉強を手伝ってくれていた。そのおかげで今の高校に入れたと言っても過言ではない。
だけど最近は優さんも忙しいのか、あまり姉ちゃんのカフェにも顔を出さなくなった。会うのはいつぶりだろうか。
これほどまでに連絡先を交換していなかったことを悔やむ事はない。
二「てか、連絡先交換しません？」
六「たしかに、交換してなかったもんね。」
(よしっ！これで勉強の強大な助っ人が増えた！)
くぅーん
弱々しい鳴き声が聞こえ、視線をやると優さんの腕のなかにいるわたあめみたいな犬がくりくりとした目でオレを見つめていた。
(かっ…かわ……！いや、オレにはさくらが！！)
少し芽生えた浮気心を振り払う。
二「…なんて言う犬種なんすか？」
六「ポメラニアンっていう犬種だよ。名前はユキさん、かわいいでしょ？」
二「…そっすね」
オレがそう言うと優さんは優しく微笑んでユキさんに顔を寄せる。
(…もふもふだ…。触りてぇ…)
六「えっ、ユキさんどうしたの？」
優さんの驚いた声が聞こえて、優さんの視線の先を追うとユキさんがオレの足もとにすり寄っていた。
二「おー、なんだよ？」
思わず抱きあげると満足気に鼻を鳴らしている。
もふもふ、ふわふわとした完璧な触り心地に頬が緩む。
二「優さん！こいつカワイイっすね！！」
(さくら…悪い！)
そう言って顔を上げると優さんは両手で口を抑えて若干涙目になっていた。その姿はさながら子の成長を目の当たりにした親の様だ。
二「え、どうしたんすか」
六「…ううん、なんでもない」
ユキさんすごいよ！
なんて言いながら優さんは嬉しそうにユキさんを撫でていた。
二「てか、優さん服めちゃくちゃ毛だらけっすよ」
六「え…わ、ほんとだ！…よかった〜、重ね着してて」
優さんは黒のセーターを着ていたから白い毛が目立つ。優さんはよかった〜なんて笑ってセーターを脱いでいる。
(……やっぱ、この人…)
(
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 34人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆきゆき | 作成日時：2023年4月12日 19時
