六浦 優 ページ5
ジリリリリリリリリ
うるさく鳴る目覚ましの音に強引に夢から引き起こされる。まだ寝ぼけた眼で時間を知るために視線を寄越した。
「えぁ、？」
間違いだと思いたい。だけどぼやけた目には針が11を指しているところが映っている。
今日は月曜日で普通に仕事がある。しかも自分が受け持つ授業が確か一時限目からあったはずだ。
「えっ！遅刻！！！」
思わず大声を出したものだから隣で微睡んでいたユキさんが飛び起きてしまった。頭を撫でていると落ち着いたのか、かわいい寝息をたてながら眠りに落ちていた。
(どうしよう、急いで準備する？いやとりあえず連絡！)
スマホに手を伸ばして電話をかけた。
「もしもし、黒崎先生。」
『んー？どうしたぁ？こんな時間に』
やけに間延びした口調が特徴の黒崎先生は僕が初めて教師になった時にいろいろ教えてくれた恩師のようなひとだ。
「すみません、僕寝坊してしまったみたいで…、急いで準備するので！」
『…は？』
「すみません今から行きます！」
僕はベッドから立ち上がり洗面所へ向かった。そのとき、スマホ越しから快活な笑い声が聞こえ足を止めた。
『ふははは！！お前今の時間ちゃんとみたぁ？』
「っえ？今の時間、ですか？……あ、」
サイドテーブルに置いてある時計を見やり気づく。先程よりもしっかり見えるようになった目には針が6を指しているシーンが映る。
「ごめんなさい！こんな朝早くに！」
『ふは、いーのいーの俺ショートスリーパーだし』
黒崎先生のツボに入ったのか、黒崎さんは奥さんからのビンタが来るまで爆笑していた。
『イッテ〜、まぁお前の"そういうとこ"俺は好きだしあんま気負いすんなって！』
「…！ありがとうございます！じゃあまた学校で！！」
ほくほくとした気持ちで電話を切った。カーテンを開くと綺麗な朝焼けが僕を包み込んでくる。
いつのまに起きたのか、足元に擦り寄ってきたユキさんを抱きかかえる。
「僕も精進しないとだね、ユキさん」
元気よく鳴いたユキさんを一吸いした後、支度のために洗面所に向かった。
(黒崎先生が言っていた"そういうとこ”ってどういう意味だろ？)
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作者名：ゆきゆき | 作成日時：2023年4月12日 19時
