久しぶり ページ2
(どうしよう…暇だ。)
大学を出たはいいものの、行き先が見当たらず歩みを止める。バイトの時間はまだ先だし、とまで考えて小さくため息をついた。
先ほどの自分の痴態を思い出すだけでも顔が熱くなるのを感じる。
本来なら今日は自分の受ける講義はない。それなのに何を思ったのか、大学に向かったのだ。そのせいで黒崎には笑われるし散々な目に遭ってしまった。
(いや、恥ずかしいっ！穴があったら入りたい！！)
恥ずかしさが頂点を迎え、空を仰ぐ。ひとしきり悶えたあと、視界を元に戻す。
ふと、向かいの歩道に小洒落たカフェがあるのが見えた。
そういえば、少しお腹が空いたような気もする。mawarimichiカフェで昼食をとるのも考えたが、自分の働いてる場所に客として行くのも変な話なのでやめた。
とりあえず、そのカフェを目指すべく一歩進むと肩に強い衝撃が届いた。誰かとぶつかったんだと理解するにはあまり時間は掛からなかった。
⁇「ッ！！」
俺はあいにく少しよろけただけで済んだが、相手の方はそうもいかなかったらしく顔から派手に転んでいた。俺は血の気が引いた。
(どうしよう！この人がもし怖い人だったら、汚れた服にケチつけられてお金ぼったくられるかもしれない！どうしよう…、)
「あ、あの！ごめんなさい！俺よそ見してて、気づかなくて…ほんとにごめんなさい！」
⁇「……大丈夫ですよ、こういうの慣れてますから。…あれ？」
意外にもぶつかった人は優しい声で謝り倒す俺を宥めてくれた。
その人は立ち上がり服の汚れを落としながら俺の方を向＿＿＿＿＿かずに電柱の方を向いた。
「……あの、俺こっちです。」
「あ、はは、こっちか。」
今度は間違えずにこちらを向いたその人は微笑みを浮かべていた。
＿＿俺はその困ったように笑う顔に見覚えがあった。
「六浦、さん？」
六「え、？……颯くん？」
その人＿いや六浦さんは数回瞬きした後合点がいったように俺の名前を呼んだ。
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作者名：ゆきゆき | 作成日時：2023年4月12日 19時
