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「え……」

車内に緊張が走る。
後ろの席に座る谷地は、顔を真っ青にさせて、隣の清水の腕にしがみついていた。

「私はそこの生徒ではありませんでしたが、噂では誰が何のためにやったのかも分からないまま、取り壊しになったそうです」
「て、てことは犯人まだ捕まって……」
「ええ、未だ。これも噂ですが、大量虐殺があった後捜査が行われましたが、生き残った生徒と死亡した生徒を合わせて四百人いなければおかしいところ、一人、足りなかったそうです。犯人は生きており、学園のどこかに……」
「……一人足りないってことは、いなかった一人が犯人ということでしょう?」

月島は冷静に、そして首を傾げた。

「あまりに惨い殺され方をしたもので、身元の分からない生徒が何人もいたそうなのですよ。ですから誰が犯人かまでは、ね」

ひ、と誰かが喉を鳴らした。
運転手はそんなバレー部をミラー越しに見ると、先ほどの脅すような声とは打って変わり、笑い出す。

「いやあ、すみません。嘘です」

嘘なのかよ! と誰かが叫ぶ。
日向は掴んでいた影山の袖をそっと離し、バレないように目をそらした。

「お前ビビってたのか」
「ビビってねえし! そういう影山だって手が震えてたぞ! 俺は知ってるからな!」
「へえ王様ビビってたの?」
「んだと月島ァ!」



「まあ、大量虐殺は本当にあった事件なのですがね」

運転手の呟きは誰にも届くことはなかった。

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作者名:10番目 | 作成日時:2020年10月20日 3時

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