【戦国BASARA】流離いの料理娘、いざ行かん!参【トリップ】

料理116 ページ21

ワシが口を噤んでいれば、Aはワシが何よりも大切にしたいと思っているものを教えてくれた

「テメェが言っていた絆、それは簡単には変わらねぇモンなんじゃねぇのか?」
家「絆…そうだ、絆だ」

ワシは今まで何をしていたのだろうか
ワシが築きたいと思っていた泰平の世は絆の力で出来る
そう信じて此処まで来たのだ
そのワシが絆を信じずに何を信じろと言うのだ

拳を握り締め、Aの目を見る
何も言わずAは、只ワシの目を真摯に受け止めてくれる

流石だ、A

家「有難う、A。ワシもまだまだだった」
「別に、思った事を言っただけだ」

朝日が昇りきった庭の中、ワシとAは笑った

「そろそろ戻るか、理一と春が探してるかもしれねぇし」
家「そうだな」

庭から抜けて城に戻る頃には女中達が慌しく回廊を走っている
それを眺めてAが呟く

「朝っぱらから大変だよなー、女中って」
家「そうだな、ワシも感謝せねばならないな」
「………」
家「?如何した、A」

ワシの顔を凝視するAに問うと、Aは歩きながら答えた

「否、家康って気遣いとか出来るからよ、結婚すりゃ良い夫にでもなれんじゃねぇのかなって思っただけだ」
家「///ッ…!!またその話か…///」
「この手の話には初心だな、慶次の言う通りだ」

相変わらず恋の話を咲かせている慶次が目に浮かんだ
そして雑賀殿に軽くあしらわれている姿も

ワシが顔を赤くしているとAは挑発的な笑みを浮かべてワシの顔を窺う

「そうだな、あたしは家康の為になら朝から走り回ってもいいぜ?」

Aの言葉の意味を咀嚼する様に考える

朝から走り回ると言う事は家事をすると言う事
“ワシの為になら”とはワシのみを意味する

つまり……

ワシは顔が完全に茹るのが分かった
湯気が出るのではないかと思える程だ

家「////ッ!!??////」
「ククッ、耳まで真っ赤だぞ」

したり顔でそう言いながら先に城の中に戻るAの後姿
揺れる金色の髪がAの色香の後を引く

家「///〜〜〜…、参ったなこれは///」

顔に集まる熱の感覚が段々愛おしく感じられる様になる
雄雄しくもあり無邪気でもある
男らしくもあり女らしくもある
刀の如く鋭い眼差しも華の如く儚い眼差しも
全てが愛おしい

家「///…若し本当になればな///」

小声で先程のAの言葉が現実になる事を願った

空は完全に浅葱色に染まっていた

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