【戦国BASARA】流離いの料理娘、いざ行かん!参【トリップ】

料理114 ページ19

―家康side―

夜明け前に目が覚めてしまったワシは庭を散歩する事にした
この時期でも未だ朝夕は涼しい

女中も寝ている時刻だから誰も居ないと踏んで北の庭に行く
しかし其処には既に先客が居た

薄暗い庭で一際目立つ金色の髪を揺らめかせる娘
Aだった

掌を憂い気な瞳で見つめる姿は絵巻に描かれる美女の如しだ
ワシは声を掛けるのも忘れて暫しAの姿に見惚れていた

東の山から朝日が差し込み、庭の朝露を照らし出す
嘗て雑賀殿が見せてくれた真珠の様に輝く景色は実に美しい
そんな光がAの美しさを更に際立たせる
その美しさを前にワシは感嘆の声を漏らした

家「美しいな…///」
「!家康」

直ぐに振り返り、ワシの名を呼んでくれるA
靡く髪は朝日と朝露の光で輝きを増している
瞳は先程の憂いが消え、替わりに無垢さが輝いていた

何故そんなに美しく或れるのか

ワシは疑問に思えた
今まで出逢ったどの女子よりもAは美しい
然しAはその美しさを飾る事は無かった

自然であるが故の美しさ

そんなAにワシは惹かれる
暫くの間見惚れながら考えているとAに見られている事に気が付いた
ワシは咄嗟に弁解をした

家「あ、偶々目が覚めてだな!それで散歩を…//」
「?何焦ってんだ…。別に怒ってねぇし」
家「ハハ、そうだな」

Aの変わらない態度にワシは安堵の息を零す
Aの隣から庭を眺める
庭師の丁寧な手入れによって出来た庭は見事だった

然しこの庭は永久に美しい訳では無いと思うと悲しく見えた

家「未だ夜は寒さが残るからな…、夏になればこの景色も見れない」
「あー、成る程。けど終わりに近づけばまた見れるだろ、露は夏の終わりから秋の初めが多いらしいから」

Aの言う事は恐らくこの朝露のある庭を指しているらしい
ワシはそれが少し寂しく思えた

家「そうだな…」
「??」

眉間に皺を寄せるAの顔を見据えてワシは問うた
Aはワシの両の眼をしっかり捕らえる

家「A、この乱世の世で……変わらないものは或ると思うか?」
「!!」

驚きの目をするA
その後直ぐに先程よりも深く眉間に皺を寄せる
問いが難しかったらしい

そう思っていたが直ぐに答えを聞かせてくれた

「…無いだろ」

無い

その答えは至極当然の事だ
だが何故だ
Aに言われると深く悲しく感じられる

Aからは…希望のある答えを聞きたかった

そう思えてしまったワシは何と自分勝手なのだろうと思った

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