【名探偵コナン】不幸後は全て幸福成り得たり5

人間らしいー江戸川sideー ページ6

彼女と言葉を交わしたのは、ある事件を解決した後だった。

人が命を奪われたのに彼女は表情を一切崩さなかった。服装は黒を中心としていて、雅美さんが最期に言っていた事を思い出した。

いや、忘れた事はねぇけど…
忘れるわけない。

未だに遺体は見つかってないらしいが、海に飛び込んだ形跡があった。あの怪我じゃ助からなかっただろう。

……組織のカラーがブラック。

雅美さんも組織の被害者だった。


黒を纏っていた彼女に何者だと問いかけると、朗らかに笑って探偵だと答えた。

近いうちに会える気がする。なんて言葉を置いて彼女は去っていった。疑わしいのに変わりはないけど、組織の人間があんな風に笑えるだろうか？


彼女との再会は案外早かった。

強盗に人質にとられても変わらない表情。寧ろあの人は笑っていた。

素早い一撃は手加減されているようで、本気を出したら蘭とは比べられないくらい強いんじゃないか？

引き攣る頬を気にしつつ何者かを尋ねると、本当に困ったような顔で再び探偵だという。

名前は篠宮優。

疑いを向けているのに気づいたのか、彼女は実家が道場という新しい情報を落とした。

暫く探り合いが続いたけど、急に彼女は真剣な表情で俺に言った。

「事件に関わるなとは言わないわ。けど、怪我には気をつけなさい。それで悲しむ人が絶対にいるのだから。」

俺の事を思ってのように聞こえた。
実際そうなんだろう。

けど、何故だか違和感を覚えた。

篠宮さんを信頼するには何かが足りない。漠然と思ったのは、強盗を倒した彼女に微かな狂気を感じた気がしたからだろうか？

悪人でもなさそうだし、なら善人かと聞かれたらそうでもない。

わからない。黒なのか白なのか…

これだけは言える彼女はきっと、とても人間らしい人間だ。

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