しあわせみらいのあさごはん ページ42
「……ん…」
いい匂いに目を覚ます。
「…はよ」
「おはよう。焦凍」
振り返って微笑むAを見て、今日もいい日だと焦凍は思う。
「いい匂いだ」
「もう少しでできるから、支度して…」
「……」
「どうしたの？」
焦凍はAを抱きしめて離さない。体ごと振り返ったAの、寝癖を直す手も愛しく思いながら、焦凍は呟く。
「高校のときの夢、見てた」
「…わたしとしては、忘れて欲しいこともあるんだけど」
そんなAの手を取って、焦凍はそっと唇を寄せる。
「冗談。Aとのこと、少しでも忘れるわけねェだろ」
「…焦凍って、時々キザだよね」
「そうか？」
「しかも無自覚…」
と、
━━━━━━━ひょいっ
「あ」
ウインナーをつまむ手。
「それ、お弁当の…」
「美味い」
「…しょうがないなぁ、もう」
「……」
「今日は甘えたな日？」
抱きついたまま離してくれない焦凍にAは笑う。
「じゃ、オマケしたげよっか」
「？」
「はい、どうぞ」
目の前に、黄色くてふわふわな卵焼き。焦凍はぱくりとそれを口に含んだ。
「ひゃっ…！」
差し出してきた、Aの指ごと。
「ん…」
「あ、こらっ」
手を引っ込めようとするも、がっちりと掴まれている。焦凍は卵焼きを飲み込むと、ちらりとAを見て、その指先に舌を這わせた。敏感なところに触れる体温に、湿った感触に、温かい吐息に、耳をくすぐる濡れた音に、てらりと光る指先に。
「〜〜〜〜！！」
ぞわぞわと、背中が落ち着かない。
「…ん、ごちそうさま」
「ばっ…か、焦凍っ…！」
「悪ィ」
Aはわかっている。これは、悪いと思っていないときの「悪ィ」だと。
その証拠に。
「…もっと食いてェ」
そんなことを言う。
(ああ、もう)
これが、悪くないと思うあたり。
(わたしも、末期だ…けど)
「これから仕事でしょ！」
「…」
「な、なに」
「……帰ってきたら？」
こてりと首を傾げる動作にきゅんとしたなんて、言わない。
「っ、好きに、すれば…」
その答えに、焦凍が幸せそうに笑うから。
もうどうにでもなったっていいやとAは思うのだ。
(好きだなぁ)
きっとこの先も、幸せな日々が待っている。
そう確信できるくらいには、幸せな日々を送っている。
「…焦凍」
「？」
「好きだよ」
「………やっぱ、今」
「我慢できない子はおあずけですー」
愛しい夫の頭を撫でるその指には、小さくも美しい銀色が、優しい光をたたえていた。
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若葉 - んぅぅぅ！！読んでてニヤニヤしちゃいました…… (2022年8月27日 15時) (
レス) id: 7981b3d9d1 (このIDを非表示/違反報告)
雨色の水滴 - ほっこりしてて幸せなお話しですネ!!読んでてニコニコしました。 (2021年7月25日 22時) (レス) id: 5a0f0dfb22 (このIDを非表示/違反報告)
SangriA(プロフ) - 蒼天さん» レスおそくなりすぎましたっ…！ 轟くんがやっとむくわれました。これから2人はますますイチャイチャしていくと思います笑 コメントありがとうございました！ (2019年3月17日 10時) (レス) id: f00caaebcb (このIDを非表示/違反報告)
蒼天 - SangriAさん» あぁええ話や………尊いｯ…本当に尊い。良かったね轟くぅぅぅうううううんｯ!!!!!また美味しいお話待ってます!!更新頑張ってくださいq(^-^q) (2019年3月1日 7時) (レス) id: 565e35004c (このIDを非表示/違反報告)
SangriA(プロフ) - 図書委員ポスターイラスト担当生徒さん» コメントありがとうございます！夢主ちゃんの料理を食べるには轟くんをなんとかしないとデッドエンド(;∀;) 更新これからもがんばります。ありがとうございます！ (2019年2月24日 10時) (レス) id: f00caaebcb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：SangriA | 作成日時：2018年9月16日 18時
