【特別編】ずっとよろしく年越しそば ページ34
「今年ももう終わりか」
「早かったね」
今年ももう最後の夜。今俺がいるのは自分の家じゃなく、Aの家だ。
「毎年同じこと言ってるな」
「まあね。ていうか焦凍は家で年越ししなくていいの？」
「1年の最後と最初はAの顔を見たい」
「何それ」
年の終わりと初めに親父の顔見るより、Aのが絶対いい。…まあ、最近ちょっとは頑張ってるなとか、思わねェこともねェけど。
「あとお前の蕎麦食いたい」
「わかってますよー。ちゃんとあったかくないお蕎麦ね」
Aの蕎麦食わねえともう歳も越せねェ。
「…美味い」
舌触りも喉越しも最高だ。市販品と違って、蕎麦のいい匂いもする。昔姉さんが打った蕎麦は、歯にめちゃくちゃくっついて食べにくかったな、と思いだした。麺だけじゃなくて、麺つゆも出汁がきいてて美味かった。
「ふふ。よかった」
「大晦日は蕎麦の日だな」
「ううん…そう思ってるのは焦凍だけじゃないかな」
「そうか？」
大盛りの蕎麦は、もう半分くらいまで減った。美味いから仕方ねえ。
「年越しそばって、長生きできるようにとかそういう意味だったか？」
「うん。昔から『細く長く』ってね。あとは、麺類の中でも切れやすいから、厄を次の年に持ち越さないって意味もあるみたい」
「…『細く長く』なのに、切れやすい？」
「わたしも思ったけど、そこ突っ込んだらダメかなって」
まあ、『急がば回れ』に『善は急げ』とかもあるしな。そんなもんか。
「まあでも、『細く長く』はヒーローには合わないかもね」
「？」
「一度に全力を出し切らずに長く続くように少しずつするって意味らしいから」
「なるほどな」
確かに、ヒーローは全力を出し切らずに、なんて言ってられないか。
「じゃあ『太く長く』か？」
そう言った俺に、Aはくすくす笑った。
「何それ。欲張りだなあ」
「短かったら、お前といられる時間が減る」
「……」
「…？ どうした」
「あ、いや…うん。なんでもないよ」
「？」
Aにしては、珍しく歯切れが悪い。
「そうだね…。わたしももっと料理食べてもらいたいし、『太く長く』でいこうかな！」
「おう。そうしてくれ」
そして、いつか。
いや、今すぐにでも。
「A、付き合おう」
「だから、そういうこと簡単に言わない」
今年最後の告白も、あえなく失敗してしまったが。
「焦凍」
「？」
「来年もよろしくね」
「おう」
この笑顔が隣にあるなら、俺は幸せな1年を過ごせると思う。
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若葉 - んぅぅぅ！！読んでてニヤニヤしちゃいました…… (2022年8月27日 15時) (
レス) id: 7981b3d9d1 (このIDを非表示/違反報告)
雨色の水滴 - ほっこりしてて幸せなお話しですネ!!読んでてニコニコしました。 (2021年7月25日 22時) (レス) id: 5a0f0dfb22 (このIDを非表示/違反報告)
SangriA(プロフ) - 蒼天さん» レスおそくなりすぎましたっ…！ 轟くんがやっとむくわれました。これから2人はますますイチャイチャしていくと思います笑 コメントありがとうございました！ (2019年3月17日 10時) (レス) id: f00caaebcb (このIDを非表示/違反報告)
蒼天 - SangriAさん» あぁええ話や………尊いｯ…本当に尊い。良かったね轟くぅぅぅうううううんｯ!!!!!また美味しいお話待ってます!!更新頑張ってくださいq(^-^q) (2019年3月1日 7時) (レス) id: 565e35004c (このIDを非表示/違反報告)
SangriA(プロフ) - 図書委員ポスターイラスト担当生徒さん» コメントありがとうございます！夢主ちゃんの料理を食べるには轟くんをなんとかしないとデッドエンド(;∀;) 更新これからもがんばります。ありがとうございます！ (2019年2月24日 10時) (レス) id: f00caaebcb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：SangriA | 作成日時：2018年9月16日 18時
