43−大粒の雨に染まる。 ページ43
「そろそろ、帰る？」
そう言われてハッとする。
「そうだね、もうすぐ暗くなりそうだし」
平然を装ってそう言ったけど、ドキドキはなかなか収まらなかった。
二人で並んで、いつもみたいに世間話をしながら帰り道を歩く。
いつも一緒にいて話してるのに話は尽きることを知らなくて、むしろどんどん広がっていく。
ルハンといるのは、やっぱり一番落ち着く。
その時、突然感じた冷たさ。
え？と思ってルハンを見ると、ルハンは空を見上げていた。
その綺麗な横顔に見とれていると、
「…A、雨だこれ」
…へ？雨？
心の中でそう呟いた瞬間、ザーッという音が聞こえてきた。
「わ！ルハン！雨！」
「それ今俺言ったって！」
「今日晴れじゃないの？！ルハン傘出して！」
「は？！お前持ってねーの？！女子なら普通常に持ってるだろ！」
「ばっかじゃないの？！そんな人いないから！」
そんな言い合いをしている間にも、大粒の雨が私たちを染めていく。
どこか雨宿りをするところがないか辺りを見回したとき、「走るぞ！」という声が聞こえてきて、見るとすでに走り出しているルハン。
置いていかれないように、慌てて私も走り出した。
二人してびしょ濡れで走っているのが面白くて声を出して笑う。
すると突然振り向いたルハンが、「お前走るのおそいんだよ！」と言って私の手を握った。
だから私も、離れないようにぎゅっと握り返した。
ふと、昔のことを思い出す。
小学生の時もよく突然雨が降ってきて、こうやって手を繋いで家まで走った。
昔みたいだなぁ、と思ったけど、前を走るルハンの体格は変わっていて。
小学生の時は同じくらいの目線だったのに、今は私がルハンを見上げている。
懐かしい気持ちになってルハンを見ていると、信号で立ち止まったルハンが私を振り返った。
「なんか、…俺た……だな」
雨の音にかき消されて、ルハンの声がはっきりと聞こえない。
「え？」と聞き返せば、ルハンがぐっと顔を近付けてきた。
「だからさ、俺たち昔に戻ったみたいだな」
その言葉に驚いて見上げると、ルハンと目が合った。
距離が近くてドキッとした次の瞬間、ルハンがふっと優しく笑った。
その時ちょうど、信号が青に変わって。
「ルハン、青だよ！」
と、今度は私がルハンの手を引いて走り出した。
44−会えない時間に、想いは募る。→←42−怒りは風が溶かしてくれる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1794人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちゅちゅ - こりゃやべぇ (2014年8月16日 18時) (
レス) id: 9899225133 (このIDを非表示/違反報告)
alim(プロフ) - MINMINさん» 毎日1話だけの更新で、どれくらい読者様に楽しんでいただけるのか。それを課題に、キュンキュンしてもらいたい気持ちで書いてました。MINMINさんのコメントを読むとじっくりと読んでくれていることが伝わってきて、本当に励みになりました！ありがとうございました！ (2014年7月3日 11時) (レス) id: 5fc8305436 (このIDを非表示/違反報告)
alim(プロフ) - 慧さん» コメントありがとうございます！たくさんキュンキュンしてほしいなぁと思いながら書いてる作品なので、そう言ってもらえて嬉しいです♪ (2014年7月3日 11時) (レス) id: 5fc8305436 (このIDを非表示/違反報告)
MINMIN - 更新ありがとうございます!!私の中でこのお話はﾎﾝﾄにｵｱｼｽで､忙しい日も忙しくない日も同じﾃﾝｼｮﾝにしてくれて､優しく懐かしい気持ちにしてくれて､また次の日の更新が楽しみになる､そんなお話です｡毎日毎日､続きを楽しみにしています (2014年7月2日 16時) (携帯から) (レス) id: b5090dbdaa (このIDを非表示/違反報告)
慧(プロフ) - きゅんきゅんしてますよぉ。 (2014年7月2日 0時) (レス) id: b16b47566a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：alim/セン
x他1人 | 作成日時：2014年5月23日 18時
